【VS.テレビプロデューサー】原題「 MAKE ME A PERFECT MURDER(私を完璧な殺人にして)」というタイトルで、日本語ver.だと秒読みの殺人と訳されています。被害者の男性が憎たらしい奴でして、「心臓に一発、ただし完全犯罪でね」と、犯人を煽ったのが運の尽き。
そこで、このタイトルに来るわけなのです。「私にだって完全犯罪はできる」
データ
脚本:ロバート・ブリーズ
監督:ジェームズ・フローリー
制作:リチャード・アラン・シモンズ
音楽:パトリック・ウィリアムズ
本編時間:98分
公開日:アメリカ/1978年2月25日 日本/1979年1月2日
あらすじ
テレビ局『CNC』ロサンゼルス支局プロデューサーのケイ・フリーストンは、支局長マーク・マキャンドリューと公私を共にする良きパートナーだった。ある日マークに、ニューヨーク本社局長フランク・フラナガンから電話が入る。業績が認められ、本社へ栄転が決まったという名誉の電話だった。
翌日、マークは自宅でそのことをケイに伝えるが、ニューヨークに一緒に連れて行かないばかりか、支局長の後釜にもトップに立つ器ではないと推薦をしないと話す。マークは栄転を機に関係を終わらせたいとケイを捨てたのだ。自身を弄んだマークへの殺意が芽生えた瞬間である。
ケイは、自らの声で録音した秒数をカウントダウンするテープをレコーダーにセットする。試写会で重役たちに映像を見せている間、サンプルで見せるフィルムを持ってきてほしいと映写技師ウォルターに話した。彼が映写室を出ている間、レコーダーで秒読みを聞きながらフロアを移動すると、オフィスで仕事をしているマークを射殺。時間内に再び映写室に戻ったのだった。
人物紹介(キャスト/吹き替え声優)
今回の犯人:ケイ・フリーストン
役者:トリッシュ・ヴァン・ディヴァー
吹き替え声優:寺田路恵
概要:テレビ局「CNC」ロサンゼルス支局プロデューサーの女性。支局長マーク・マキャンドリューのチーフ・アシスタントを務め恋人でもあった。マークがニューヨーク本社に栄転するのが決まると喜んでいたが、支局長の座の後任には選んでくれず、さらに別れも告げられてしまう。この仕打ちを受けて、彼女はマークへの復讐を決意。映写室から抜け出すと僅かな時間を利用して犯行に及んだ。
選出しなかった理由としてマークによると、「アシスタントとしては優秀。だが決断ができない。まとめるだけだ」と語っている。音響スタッフは、「テレビ業界で一番始末に負えないのが、全部わかってる女性」と言っており、まだ男性社会であったことを暗示している。
『ザ・プロフェショナル』というスパイ物の映画を企画していた。主人公がダイハードのマクレーンのようなタンクトップを、着て銃の手入れをするシーンがある。銃で頭を撃ちぬくシーンがあったりと、試写会時には「放送コードに引っかからないか?」「お茶の間向きじゃないな」と重役の2人から言われる。
本部局長フランク・フラナガンは彼女のことを高く評価しており、「ウチのやり手」とコロンボに紹介をした。実際に、エミー賞の最優秀ドキュメンタリー賞を獲得している実績がある。そのため、マークの後任として仕事を任せた。
支局長の座につくと、友人である女優ヴァレリー・カークが生放送に出られないと渋っているのを説得したり、回転木馬を用いた90分のメロドラマの撮影を指示、「果てなき大地」の主演としてクレイ・ガードナー獲得に向けた交渉指示などを行い、うまくまとめたように見えた。
だが、マークの予言通り適格な決断が出来ず、ただまとめるだけであった。結局、ヴァレリーはドラッグに手を出して生放送には出られず、温めてきた映画『ザ・プロフェッショナル』を穴埋めとして放映する。視聴率はニューヨークで5.4%。平均シェア9.3%であった。
回転木馬を撮影する監督にも夜逃げされ、撮影現場に向かう。そこでフランクからは、「ザ・プロフェッショナル」を穴埋めに使ったこと対し、貴重な作品をドブに捨てたと言われ、支局長室に移る予定であったが、「故人の後釜に飛びつく、その神経も疑うね」と烙印を押される。
業績不振により支局からの転勤が決まると、「きっと這い上がって見せます」と言ったが、編集室に戻ると震えながらタバコを吸った。コロンボ警部から逮捕された時には、「戦って生き残る。それがあたしの生き方」と堂々と退場する。強く気高くも儚い女性犯人であった。
かつて家族4人で暮らしていた生家があるが、現在は廃屋となっている。
今回の被害者:マーク・マキャンドリュー
役者:ローレンス・ヴァン・ディヴァー
吹き替え声優:森川公也
概要:テレビ局「CNC」ロサンゼルス支局の局長を務める男性。各地に支社が多数あるようだが、その業績を認められ、ニューヨークにある本社に重役として栄転することが決まった。これで全て局を回ったと語る。
栄転を期に、愛人関係にあったケイ・フリーストンとの関係を終わらせ、別れのプレゼントに送ったのは『450SL:シルバー』である。ナンバープレートは「KAI#1」と、ケイの名前の番号を獲得していた。車のキーをカクテルの中に入れて、彼女が飲み干したときに車のキーが見つかるようにしていたが、結局は自分自身で車のキーをケイに渡すことになる。
遠近両用のメガネをかけており、書類などに目を通す際には額にメガネをかけていた。また、射殺された時の距離が6mである。メガネを掛けてはいなかったが、ケイの顔は認識できていた。そこまで視力は悪くはない様子。
自宅は海岸沿いにあり、休日にはヨットで遠出したり楽しんでいたらしい。新聞にある漫画のページは必ず見るようだ。また、パイプ愛煙者であった。
小ネタ・補足
〇コロンボ警部が故障したテレビの修理を頼んだ電気屋の主人を、『ブルース・カービィ』氏が演じている。コロンボ警部の同僚「ジョージ・クレイマー」刑事役(28話、31話、34話、37話、51話、52話)以外には、18話『毒のある花』で化粧品会社スタッフ以来の違う職種での出演である。
〇コロンボ警部がフィルム交換しようとした映画は、1934年放映『Bolero』である。
まとめ
サスペンスなエピソードなんですね。殺人を決行する秒読みの音声が緊迫感を与えております。腕時計で確認しておけばいいんじゃないの?って感じですが。コロンボ警部とのエレベーターで拳銃をめぐる攻防はスリルがあります。
ケイの仕事に対する情熱や、出世を目論む野心が印象的でした。一方で、テレビ業界のスタッフや被害者からは、女性軽視の見方が強く見られます。本社局長のフランク・フラナガンは彼女のことを評価して、マークの仕事を引き継ぎさせますが、それには上手く答えられなかったケイ。
一時とはいえ、自分の出世したいという願望も叶いましたが、やはり器ではなかったのです。悲壮感のある終わり方になってしまいかねませんが、そこは彼女の信条である「戦って勝つ」。一度は地に落ちましたが、這い上がって来るというのが彼女の生き方で締めくくられます。
犯人に主軸を置いた展開であり、主人公に共感や応援したくなるかかどうか。これがストーリーの要なんですね。視聴者側とすれば、この点が好き嫌いが別れるエピソードでしょう。
以上、42話「秒読みの殺人」でした。
コロンボが愛犬を連れて行った閉店後の電器屋でのシーン、電器屋の主人役の俳優さんて、何度かコロンボの同僚刑事役で出てた人ですよね。
コメントありがとうございます!
仰せの通り、電気屋の主人を『ブルース・カービィ』氏が演じております。
コロンボ警部の同僚「ジョージ・クレイマー」刑事役では、28話、31話、34話、37話、51話、52話の6回。
クレイマー刑事役以外では、18話『毒のある花』で化粧品会社のスタッフ。65話『奇妙な助っ人』のブリンドル刑事役で登場しております。
補足欄に記載させていただきます。ありがとうござました。
僕を撃てば満足かと挑発されたこともありますが(本人はジョークのつもりかも?)、一方的にフラれたことを恨むのはまだしも恋人だから後任に選ばれるはずだったのに選ばれなかった、という動機は慢心や驕りを感じました。こちらでも触れられていますがマークのケイについての評価はその後の彼女の仕事振りを見ると概ね正しい様ですし、それを弄ばれたとか裏切られたと感じて殺害にまで至ってしまうのはやはり器が不足しているということなんでしょうね。世間にも周囲にも評価する声はあった訳で焦らなければいずれはその地位に就けたのでは…とも思いますがそう出来なかったのは過剰な野心のせいでしょうか。
加えて犯行時の秒読みの音声、腕時計でいいんじゃないかと書かれていますがやはり4分という短い時間である以上一々目線をやらなきゃいけない時計やタイマーより自動的に耳に入ってくる音声の方が確実ですし慌てて何かミスするリスクも減るでしょうから個人的には特に違和感はありませんでした。
突然の書き込み失礼しました。
コメントありがとうございます!
≫僕を撃てば満足かと挑発されたこともありますが(本人はジョークのつもりかも?)
≫弄ばれたとか裏切られたと感じて殺害にまで至ってしまう
利用するだけ利用して車で縁を切るマークの言動は憎たらしさは満点ですが、支局長としての眼力は確かで、彼女の仕事に対する強みと弱みは的を得ておりました。マークも栄転することが決まって浮かれていたんでしょうね。推薦しない理由をもう少し丁寧に、オブラートに包みながら説明できていれば惨事は免れたのかもしれません。
≫世間にも周囲にも評価する声はあった訳で焦らなければいずれはその地位に就けたのでは
名誉ある賞も獲得し、本部局長からの評価も高く受けていました。私も、遅くはなりますが支局長の座も獲得できたと思います。「故人の後釜に飛びつく、その神経も疑うね」と言われてしまうぐらいにタイミングが早すぎたんですね。男性社会であるテレビ局内で、やはり一刻も早く地位向上を目指したかったんでしょうね。
≫目線をやらなきゃいけない時計やタイマーより自動的に耳に入ってくる音声の方が確実ですし慌てて何かミスするリスクも減るでしょう
そうですね! イヤホンから聞く方が両手も空きますしね。視線を外した間に気が付いたら時間が……。なんて失敗してしまうよりも、イヤホンから時刻までの秒読みがあった方が時間管理もしやすいですね。
個人的には古畑任三郎の『哀しき完全犯罪』のような一見共感路線に見せかけた叙述路線だったように思います
まずマークの犯人に対する評価は概ね正しく、決断力(というよりかは判断力ではないかと思いましたが)に欠け、支局長に就いたは良いが次々に失敗してしまいました。
そして犯行時やその後の判断もかなりお粗末、まず硝煙反応のついた手袋を放り投げてしまった点や別に隠滅する必要のない銃をわざわざ取ったという点にもあります。
手袋をはめた状態で銃を撃ちましたから指紋はなく、見つかっても知らぬ存ぜぬを通せば良いだけですし、生前紛失していたと言っていたとでも言えば十分言い逃れできます。
一方で手袋は硝煙反応がついた上に手袋を外した際に指紋までついており、決定的証拠ともいえる物を放り投げてしまいました。
また、マークとは愛し合っていたのではなく出世の為だったのではないかと感じさせる出来事が後に同性愛を感じさせるような描写がありました。
そう考えれば振られたショックよりも支局長の後任に選ばれなかったことに腹を立てていたことも納得できます。
他だと自身をタフで這い上がって見せると強気に言うも編集室で震えながら煙草を吸うなど自身を客観視できてない点などが気になりました。
個人的には最初にエミー賞や有能のような描写があるのでその先入観を持って見ていくのですが、実はそれほど能力があるわけではないという前提で見ると全然違う背景が見えてくる共感路線に見せかけた皮肉の利いた作品のように思いましたが、さすがにこれは穿った見方でしょうかね…。
刑事コロンボ『秒読みの殺人』への考察ありがとうございます!
≫古畑任三郎の『哀しき完全犯罪』のような一見共感路線に見せかけた叙述路線
≫犯行時やその後の判断もかなりお粗末
≫タフで這い上がって見せると強気に言うも編集室で震えながら煙草を吸うなど自身を客観視できてない点
手袋は決定的ですよね。一見すると上手く立ち回れているようですがボロが多い。そうなると、「戦って生き残る」という座右の銘も、自分を客観視できていないぶん悲壮感もあります。
コロンボ警部が初めて現場検証をするシーンで、「こんなちょっとしたことでも引っかかりになるんですよ。まるでかすかな声が耳元でホシの名を教えたがっている感じでしてね。(それをじっとお聞きになろうとするわけね)まさにその通りです。それしか手がないんですから。よく見よく聞く。それだけです」というセリフがあります。状況を素直に直視していくコロンボ。
反して犯人というと、「あなたは素晴らしい方ね。事態を素直に受け入れて。でも私は違ったわ」。コロンボとケイの考え方が対照的なんですね。このエピソードで特徴的なのが、他エピソードと違い、コロンボ警部の捜査が一切行き詰ることなく犯行が簡単に暴かれてしまうことです。直面した事態をどう受け止めるのか?あるがままを素直に受け入れていくコロンボ。受け入れられないケイ。 犯人の中心的な考えが集約させられていると感じるセリフでした。
≫同性愛を感じさせるような描写
古畑任三郎『しばしの別れ』でも、この点をオマージュしたのではないかなぁ……と、勝手に思っています。
≫個人的には最初にエミー賞や有能のような描写があるのでその先入観を持って見ていくのですが、実はそれほど能力があるわけではないという前提で見ると
これは良い逆転の発想ですね。手腕などで評価を得たのではなく、TV局内で珍しい女性プロデューサーだったからなど別の理由からノミネートされたのかも知れませんね。『哀しき完全犯罪』のように、自分の力で番組が取れ、やっと1人前になれたと思っていたのは勘違い。そういった思い込みがあるとすると、犯人の内面が強調され、より味深い人物像が浮かび上がりました。
どうでも良い追加情報です。
トリッシュ・ヴァン・ディヴァ―は、映画「イルカの日」のヒロインでした。
最近、BSで放送された「秒読みの殺人」のエンドテロップで、女優の名前を確認し、
Wikiで調べたら、中1の時にTVで見て大好きになった「イルカの日」の出ていた
あの女性だったとわかり、ちょっと感動しました。
彼女は今年の3月で80歳になられます。
金ちゃん!様
≫トリッシュ・ヴァン・ディヴァ―
≫TVで見て大好きになった「イルカの日」の出ていたあの女性
≫彼女は今年の3月で80歳
『イルカの日』まだ未視聴でした!観てみます。昔見た映画に登場された役者さん。思い出との再会ですね。