【VS.写真家】おおよそ抜かりのない完全犯罪です。コロンボ以外の刑事も登場しますが、口をそろえて利用され殺害された人物が犯人と決めつけてしまいます。コロンボ警部以外では犯人を逮捕できなかったでしょう。
犯人は写真家ポール・ガレスコ。悪妻である妻に対しての不満がたまり殺害計画をくわだてます。肉を切らせて骨を断つ。妻を殺害した彼は、アリバイ工作に利用した男をも殺害。自身の太ももを銃で打ち抜き、誘拐犯人と対峙したための正当防衛で犯人を射殺という筋書き完成させて、妻を殺害された悲劇の夫を演じます。
データ
脚本・ストーリー監修:ピーター・S・フィッシャー
監督:アルフ・チェリン
制作:エヴァレット・チェンバース
制作総指揮:ローランド・キビ―&ディーン・ハーグローヴ
音楽:バーナード・セイガル
本編時間:95分
公開日:アメリカ/1974年10月6日 日本/1975年12月20日
あらすじ
写真家のポール・ガレスコは、支配欲が強く独善的でわがままな妻フランシスに、いいように使われていた。妻に対して殺意が芽生えていた彼は、別荘を購入したと空家に連れ出すと、誘拐事件に巻き込まれたように見せかけたうえで射殺する。
翌朝、ポールに指示された時刻で電話を掛けたのは、刑務所の撮影で知り合った前科者アルヴィン・ダシュラーである。ポールは誘拐犯からの電話のやりとりをメイドに見せると、アルヴィンは疑問に思いながらも待ち合わせ場所の廃車場に向かった。その一方で、ポールはアルヴィンの部屋に侵入すると、妻の誘拐に使用した道具を置き、廃車場で合流した。
ポールは妻が誘拐されたと、脅迫文書をアルヴィンに手渡す。これで彼の指紋が付いた。口封じのため彼を射殺すると、凶器の銃で自分の太ももにも発砲した。これでアルヴィンを誘拐犯に仕立て上げ、正当防衛で射殺したシナリオを完成させたのだ。
人物紹介(キャスト/吹き替え声優)
今回の犯人:ポール・ガレスコ
役者:ディック・ヴァン・ダイク
吹き替え声優:新田昌玄
職業:写真家
概要:写真家の男性。妻フランシスと結婚して15年になるが、口やかましく、支配欲ばかりで人生の楽しみを奪われてしまうほど悪妻だった。町から離れた空家で誘拐犯人から殺害されたように見せかけると、刑務所の撮影で知り合った前科者アルヴィン・ダシュラーにその罪を擦り付けて射殺する。妻を殺した凶器の拳銃を自らの太ももに発砲したことで、誘拐犯アルヴィンに銃撃され、正当防衛で彼を射殺した構図を作り上げた。
毎晩、「奥さんが亡くなりました」という夢を見るのだと話す。しかし、喜んで起きるも死亡しておらず、涙を流すこともあったほど精神的に追い詰められていた。夢のお告げか、殺害しなければ収まらないほどの憎悪だったのか、妻の殺害を実行することを決意した。
ピューリッツァー賞に2度も輝いている写真家としてのプライドか? 脅迫文書に添える、妻の縛り上げられた写真を撮る際には2回も撮り直しをしている。その写真を持ち帰らずに丸めて捨ててしまったのが運の尽き、コロンボ警部に怪しまれることに繋がった。
「3年間くだらないポートレート(肖像画)を撮った」と語っており、丁度妻への殺意が芽生えたのも3年前である。妻への資金稼ぎのために、やりたくもない仕事依頼を受け付けていたのだろうか? この点でもストレスが溜まっていたのかもしれない。
アルヴィン・ダシュラーとは刑務所の撮影で出会っており、撮影のために7週間、囚人たちと共に暮らしたそうである。その刑務所での生活をまとめた、計522枚からなる写真集は1部25ドルで販売しているそうだ。(1974年10月1ドル=299円 25ドル=7475円)
助手であるローラ・マグクラスに好意があり、彼女もまたポールの気持ちに寄り添う形でその好意に答えようとしている。事件が落ち着いたら、フィリピンに行く予定であった。
今回の被害者:フランシス・ガレスコ
役者:アントワネット・バウワー
吹き替え声優:阿部寿美子
職業:ポールの妻
概要:ポール・ガレスコの妻である女性。結婚して15年になるが、ポール曰く、「口やかましく、支配欲ばかりで人生の楽しみを奪う」と語る。誘拐されたように見せかけて殺害されてしまった。
家政婦本人には直接言わないが、家政婦に掃除をしっかりするようにポールを注意していた。彼の助手ローラ・マグクラスからも、フランシスの当たりの強さは非難されている。
殺害される当日には、リレビーの慈善バザーに行くつもりで狙いはお茶のセットだった。夜にはオーケストラに行くと、前々からドレスを買っていた様子。ここ数日、胃の具合が悪かったようで、家政婦が気を利かせてヨーグルトとハチミツを購入してきていた。
今回の被害者:アルヴィン・ダシュラー
役者:ドン・ゴードン
吹き替え声優:野島昭生
概要:前科者の男性。金品強奪の罪で、サンクエンティン刑務所に5年間収容されており、ここ3週間で出所した。新聞の記事によると1匹狼で犯行をしており、恐喝の罪で捕まったこともあるようだ。ポール・ガレスコに利用され、誘拐犯に仕立て上げられたあげくに殺害される。
ポール・ガレスコとは刑務所での撮影で知り合い、刑務所での生活を撮った計522枚の写真の内、9枚は彼の写真であった。出所してからは、ポールから別荘を買いたいという名目で、ポラロイドカメラの購入して都合の良い物件の写真を撮っていた。
出所後の生活費は全てポールが支出している。モーテルやタクシー代金など、レシートを渡すと現金で返してくれたようだ。それを利用して、ポラロイドカメラの購入金額が20ドルだったが、店員にレシートを100ドルにしてもらう。謝礼に店員に10ドルをチップとして渡した。計70ドルの儲けである。(1974年10月1ドル=299円 70ドル=2万930円)
ポールの頼みである別荘を購入するまでに、不動産会社マグルーダと共に30~40件物件を巡っている。根っからの町っ子であるようだと、マグルーダは語った。運転免許は午前中の試験で1発合格しており、教官からも「良いドライバーだ。理想的でしたよ」と評価されている。
小ネタ・補足
〇ノベライズ版によるとポール・ガレスコは、妻の弟が撮った写真を使い入賞をしており、妻には頭が上がらないという設定がある。そのため離婚ができないでいた。
〇救済施設のシスターを演じた「ジョイス・ヴァン・パタン」は、39話『黄金のバックル』の犯人ルース・リットンを演じることになる。
〇コロンボ警部はレインコートを7年愛用しているようで、37サイズのSを着用している。
〇ピューリッツァー賞は「報道部門」「文学芸能部門」「音楽部門」と別れており、その3つの部門から、さらに21分野に細分される。写真家のポール・ガレスコは、報道部門(特集写真・ニュース速報写真)で受賞したのではないだろうか。
〇80分~コロンボ警部が自動車教習所の教官との会話で、「シートベルトはどこです?法令で決まっているんです」というセリフがある。日本においては、1970年代に製造されたシートベルトがない車に限り、シートベルトを装着しなくとも走行可能で違法ではない。
まとめ
見事な殺人計画なんですね。誘拐事件に巻き込まれたように見せかけて殺害するという、『死者の身代金』『悪の温室』の発展形でございます。この計画で見事な点は、架空の誘拐犯人の犯行に見せかけるのではなく、前科者アルヴィンに罪を擦り付けていることです。
アルヴィンには自分の仕事を手伝わせるように促して、気が付かない内に誘拐犯人に仕立て上げられているんですね。そのうえで彼を射殺して、自らの足を撃ち抜いて正当防衛で殺害してように見せかけるのは見事ですね。
ユーモラスな場面が多いのも印象的です。酔っ払い演じる『ヴィトー・スコッティ』の名演。救済施設のシスターとコロンボ警部のやりとり。交通指導員ウィークリーとの車の運転などは面白いです。なによりも最後のシーンはまさに逆転。「あなたも、目撃しましたよね?」
以上、27話「逆転の構図」でした。
この話、ノベライズはバージョン違いがあるんですよね。
コロンボが最後に「なんで離婚しなかったんですか?」と聞いたら、
名を挙げた写真がフランシスの甥が写したもので、それを使ってしまったことが強請の種になったと言うのですが、
その甥が世界に撮影に行って行方不明になったバージョンと、
伯母が殺されたことを知った甥がコロンボに電話をかけて「ポールがやったに決まっている!」と情報提供にくるのとの二つありました。
≫てんてけ さん
1976年発刊:サラブレッド・ブックス版は所有しているのですが、甥が電話を掛けてくるver.でした。
1994年発刊:二見書房版では「死のポートレート」という名前で発刊をしており、そちらが甥が行方不明になった改訂版になるんですね。読み比べをしていきたいと思います。
情報提供、ありがとうございます!
「刑事コロンボ」は、夫が妻を殺害するという設定が多いですね。
今回の「逆転の構図」もそうですし、他には、第1回目の「殺人処方箋」それに「白鳥の歌」「権力の墓穴」など。
このうち「白鳥の歌」は、弱みを握られて半ば強引に結婚させられたという設定でしたが、他も、「なぜこんな女性と結婚したのか」という疑問を持たざるをえない展開でした。
60年間で結婚歴ゼロの私には、夫婦と言う者が全く分かりませんが、やはり結婚生活というのは難しいというものでしょうか。
写真家役のディック・バン・ダイクと言えば、テレビの映画番組にしばしば放送されていた、シャーリー・マクレーン主演の「何という生き方」に出演されていた俳優です。
今回は、60~70年代を思わせるアイテムとして利用されたのが、インスタントカメラ。
スマホで簡単に撮れる今とは格段の差ですが、当時はこれでも、フイルムを現像に出さずに、撮影後すぐに写真が見ることが出来るというのは、画期的だったのですね。
≫夫が妻を殺害するという設定
≫「なぜこんな女性と結婚したのか」
邪魔になった妻を殺害するという展開は多いですよね。資産家の妻や、夫の弱みを握る妻など。刑事コロンボの犯人の特徴としてよく挙げられるのが、社会的地位のある成功者ということです。そんな犯人が選ぶ妻だったので、昔は魅力的な女性だったのだと思います。
≫やはり結婚生活というのは難しい
名エピソードである『別れのワイン』のラストで、犯人はこのようなセリフを口にします。『刑務所は結婚よりも自由でしょうな』
結婚生活というものは楽しい部分もあるとは思われますが、束縛も多かれ少なかれあるのだろうとも思った次第であります。
≫ディック・バン・ダイクと言えば 「何という生き方」に出演されていた
まだ見たことがなく、見てみたいと思います! 御年94歳になりますが、2018年には『メリーポピンズ』に出演するなど、第一線で活躍しておりました。
≫60~70年代を思わせるアイテムとして利用されたのが、インスタントカメラ。
こういった品物が大好きでして、フィルムがすぐに出てくるのが魅力的です。わたしもポラロイドカメラを購入しようと考えましたが、フィルム代が高いんですよね。8枚入りで2.750円とさすがに手が出せませんでした(笑) スマホのカメラ性能が飛躍的に向上しておりますが、不便を楽しむといいましょうか? 代わりにチェキカメラを購入しましたが、撮った写真の色味は、デジタルカメラにはない独特の味わいがあります。道楽のようですが、こういった品物はなくならないでほしいです。