古畑任三郎 15話『笑わない女』がんじがらめの殺人

【VS.教師】「学校には様々な規則があります。髪の毛は眉毛にかかってはいけないとか、スカートは膝上何センチでなければならないとか。私の通っていた高校にもこんな校則がありました。すなわち、自転車で通学してはならない、登校する時は必ずネクタイをしなければならない、うなじはいつも刈り上げてなければならない。つまり、その時の反動で今の私がいるわけで・・・」

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データ

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脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:松田秀知

音楽:本間勇輔

本編時間:46分14秒

公開日:1996年1月17日

あらすじ+人物相関図

古畑任三郎 人物相関図ブライオリ女子学院の教師・宇佐美ヨリエは、同僚の教師・阿部哲也の殺害を計画していた。寮長でもある彼女は、マスターキーを使い部屋に侵入するとダンベルの柄の太さを調べる。そして、廃材置き場から同じ直径の鉄パイプを持ち出したのだった。

その晩、宇佐美はイヤホンでカセットテープを聴きながら阿倍の部屋を訪れる。授業で使う本を貸してほしいと頼み、背を向けたところを鉄パイプで殴り倒した。瀕死になった阿部の頭を掴むと、ダンベルに後頭部を打ち付け殺害したのだった。しかし、阿部は倒れる直前に宇佐美が着ていたガウンのボタンをむしり取っていた。宇佐美は、そのことに気が付いたのだが……。

翌日、椅子に乗って棚から本を取ろうとして足を滑らせた事故として調査が始まったのだが、発見時には閉まっていたドアの外側にまで血痕が飛んでおり、犯行時にはドアが開いていた。また、被害者の手は傷だらけで、犯人の物と思われるボタンを握りしめていたままだった。

人物紹介(キャスト)

宇佐美ヨリエ 古畑任三郎

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「笑わない女」より引用』】

今回の犯人:宇佐美ヨリエ

役者:沢口靖子

職業:教師

殺害方法:撲殺(鉄パイプ)

動機:秘密

概要:詳しく見る
概要:ブライオリ女子学院の教師。宗教が母体となっている学院で、戒律を基に定めた厳しい校則があるがそれを律儀に守っている。同じく学院教師である阿部哲也を、なぜ殺したのかが伏せられた状態で進むのが特徴的なエピソードだ。犯人の中でサイコパスな動機の1人である。

元々ブライオリ女子学院の卒業生であり、学生として在籍していた頃から厳しい戒律(※補足参照)を守り切っている。生徒たちにも戒律を厳しく要求し、違反を発見したら「一週間礼拝堂の床拭き」などの罰を課している。また、押収した口紅はその場でへし折ってみせた。

生徒たちは「人間じゃない」とまで比喩しており、本人も嫌われていることは理解している。この戒律を頑なに守り通す姿勢から、寮長と生活指導を兼任している。戒律に基づき存在しているような彼女であり、鉄仮面のような表情はいかなる時にも崩れない。それは、返り血を顔に浴びてもである。


阿部哲也 古畑任三郎

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「笑わない女」より引用』】

今回の被害者:阿部哲也

役者:相島一之(あいじま かずゆき)

職業:教師

概要:詳しく見る
概要:36歳、ブライオリ女子学院の国語教師。厳しい校則により生徒たちは窮屈に感じているため、生徒たちと校則を見直そうという運動を起こしていた。そのため、生徒たちからの信頼は厚く慕われていた。また学長からも、「教育熱心な先生」「親身になって生徒一人一人と接していた」と評価されている。

整理整頓が苦手なようで、学院にある自室は荷物が散らばっていた。また、アコースティックギターが得意なようで、生徒たちと歌唱を楽しんでいた。学院の教師としては型破りな人物であり、戒律を守る宇佐美ヨリエとは度々衝突していたようだ。

犯行計画/トリック

【事故死に偽装】

①寮長でもある宇佐美ヨリエは、マスタキーを使用して阿部哲也の部屋に侵入すると、ダンベルの柄の直径を調べた。その後、廃材置き場から同じ直径の鉄パイプを入手した。

②その晩『マリア・カラス』のカセットを、イヤホンで聞きながら阿倍の部屋を訪れる。そして、授業で使う『ダブリン市民』の本を貸してほしいと頼んだ。背を向けたところを鉄パイプで殴り倒す、その際、着ていたガウンのボタンをむしり取られてしまった。

③床に倒れて瀕死の阿部の毛髪を掴むと、ダンベルの柄に後頭部を叩きつけて殺害した。椅子に乗り、棚の上にある本を取ろうとしてバランスを崩し、運悪くダンベルに後頭部を打ち付けた事故死に偽装した。

推理と捜査(第2幕まで)

ネタバレ注意!
〇被害者はなぜ本を取ろうとしたのか?部屋は散らかっており、整理整頓とは無縁で本を片付けるためだとは思えない。また、取り出していた本は、本棚の一番下の段に収まる大きさだった。どうして、下の本を取るのに椅子に乗る必要があるのか。

〇血痕は部屋の外まで飛んでいた。しかし朝、生徒たちが来た時にはドアは閉まり鍵がかかっていた。つまり、犯行時には部屋の扉が開いていたことになる。部屋のマスターキーは、寮長の宇佐美ヨリエが持っているようだ。

〇被害者の手にはいくつもの傷がついていた。中には、犯人の物と思われるボタンが入っていた。なぜ、ボタンを回収しなかったのか?このボタンは、学院で身に着けるガウンであった。ボタンが1つしかついておらず、もしボタンが外れたら前が開いてしまうため、無くなったことにすぐ気が付くはずだ。

視聴者への挑戦状

「えー、これで全ての謎は解決です。もちろん犯人は宇佐美先生です。えー、今回のポイントは動機。もうお分かりですね。ヒントはこれ。古畑任三郎でした」

三幕構成

笑わない女 三幕構成

小ネタ・補足・元ネタ

〇舞台設定は、刑事コロンボ28話『祝砲の挽歌』をモチーフにしている。共に学校が舞台であり、被害者の追悼式に参加。2段ベッドのある空き部屋に泊まり、食堂で食事をする。

〇古畑任三郎と今泉慎太郎を空き部屋に案内した女子生徒は、スティーヴン・セガールの娘『藤谷文子』さんである。刑事コロンボ『祝砲の挽歌』では、ジョージ・クレイマー刑事役ブルース・カービィの息子『ブルーノ・カービィ』がコロンボを空き部屋に案内している。

〇ロケ地は『ルーテル学院』である。被害者の追悼式の場面では、ルーテル学院大学の聖歌隊が歌唱をしている。

〇ブライオリ女子学院の戒律は、下記である。他にも多数ある様子だ。
「男性と一緒に部屋にいるときは扉を開けないといけない」「人を欺いてはならない」
「笑顔を見せてはならない」「唄を口ずさんではならない」「踊ってはならない」
「化粧してはならない」「死んだ動物には触ってはいけない」
「むやみに人前で笑顔を見せてはいけない」「刺激物(茶・コーヒー等)を飲んではならない」

まとめ

沢口靖子さんの特徴を活かしたエピソードなんですね。よく感情がない、セリフが棒読みなんてネットでは書かれているんですが、それが沢口さんの独特な魅力です。さて、今回はちょっと特殊な犯人・宇佐美ヨリエで登場しました。彼女以外の代役が思い浮かびません。

宗教が母体となっている女子学院が舞台で、犯人は厳しい校則を律儀に守っています。例えば「笑顔を見せてはならない」など、沢口さんの役柄にマッチしてますね。なんとも驚きなのが他にも多数ある校則を、殺人の時や古畑から尋問を受けるときでも守っているんです。あらかじめ犯人側にルールが課せられており、古畑任三郎(視聴者)は、これを理解していくのが本作の醍醐味なんですね。

がんじがらめのような厳しい校則を守り抜く犯人ですが、なんで殺したのかが事件のポイントです。校則をなくそうとする反対派の教師・阿部哲也を「この戒律を無くしてはならない!」って思ったから殺害したわけではありません。

もっと根本から、なにゆえ戒律を守っていたのか。いや、なにゆえ守らざるを終えなかったのか。あなたにも「(俺、私)何してんだ?」って急に目が覚める場面がないでしょうか。そんなふとした瞬間が宇佐美にもあったんですね。戒律に基づいて存在する、そんな悲しい人物のように思えました。

以上、『笑わない女』でした。