古畑任三郎の原型『やっぱり猫が好き殺人事件』あらすじと感想

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この記事で紹介する『やっぱり猫が好き殺人事件』は、ドラマ『やっぱり猫が好き』の第一シーズン終了後に撮影された2時間ものであり、『犯人側の犯行から物語が進む倒叙形式』であります。三谷幸喜氏が後に手掛けた『古畑任三郎』の原点とも言える作品なんですね。

『やっぱり猫が好き』に関して、わたしは未視聴であり詳しく述べることはできません。そのため、三谷幸喜氏の著書の中から紹介をさせてください。

本作は、1988年10月~91年9月にフジテレビで放送された、イースト制作の30分深夜ドラマ。かや乃(もたいまさこ)、レイ子(室井滋)、きみえ(小林聡美)の恩田家3姉妹が住むマンションの一室(バブル期に増えたコンクリート打ちっ放しのイメージ)だけで展開する一幕芝居で、毎週繰り広げられる1話完結もの。

登場するのはほとんどの回がその3人のみ(あと、猫)。外出から帰ってきた3姉妹の誰かが、外で起こった出来事を報告するという展開が多い、舞台形式のドラマ。三谷さんが(私も)好きなアメリカの30分コメディドラマ「シットコム」(お客さんの笑い声が入る、舞台的な作りのシュチュエーション・コメディ)に近い形式だった。

引用:『三谷幸喜 創作を語る』P.19~20
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データ

企画:鈴木哲夫
プロデューサー:関口静夫
脚本:三谷幸喜
音楽:石田勝範
演出:福本義人
制作:共同テレビ/フジテレビ

本編時間:69分43秒
公開日:1990年3月29日

あらすじ+人物相関図

やっぱり猫が好き殺人事件 人物相関図

舞台演出家・水上勇は、演劇プロデューサー・入倉頼子に劇団から降ろすと宣告された。元々は水上が立ち上げた劇団であったが、オーディションでは自分好みの女性を研修生として入団させるなど劇団を私物化していたのだ。それを聞いた水上は思わず彼女を灰皿で撲殺してしまう。

被害者の自宅まで遺体を運び出すと強盗犯に襲われたように偽装する。マンションの隣の住人が送別会をしていることを利用し、車内電話から管理人に苦情の連絡を入れると、犯行時刻には部屋にいたというアリバイを作り上げたのだった。

小ネタ・補足・元ネタ

〇9分32秒~レンタルビデオショップの店員を『三谷幸喜』氏が演じている。

〇18分59秒~事件現場レポーター『軽部真一』を本人が演じている。

〇64分24秒~遺体安置室の警察官を『西村まさ彦』氏が演じている。

〇事件解決方法は、刑事コロンボ27話『逆転の構図』のオマージュである。

まとめ

『やっぱり猫が好き』シリーズは未視聴でしたが、番外編に近いようなストーリーであり未視聴者にも安心でした。

1990年3月29日に放送されたドラマであり、車内電話を利用するトリックは時代を感じます。突発的に起こった事件で巧妙な計画殺人が崩れ去る過程というものは重視してはおらず、捜査を行う恩田姉妹と新米刑事・咲坂三郎による冴えた推理が炸裂……もしません。

まず、古畑任三郎のようなロジカルな作風ではありません。犯人の軽薄な行動が何かの因果に惹きつけられたように偶然が重なりお騒がせな三姉妹に目をつけられてしまう。振り回され徐々に追いつめられていく犯人といった『サスペンス+コメディ』な展開なんですね。

荻原流行さん演じる、スマートでいて時折見せる茶目っ気がある犯人像が良いですね。やっていることは卑劣なのですが、どこか憎めません。映像の倒叙もので面白いのが、ありとあらゆる表情を見ることができることだと思います。

犯行前後の緊迫した目線、ひとまず計画通りに進む安堵感、思わぬ所でつまづいた苛立ち、職場での立ち振る舞い、捜査がなく一人でいる時の素の自分、痛いところを突かれていき弱気になる表情の変化等、その役者さんの喜怒哀楽といったバリエーションを楽しめるのです。

後の古畑任三郎に繋がるような演出もありましたね。冒頭は『絶対音感殺人事件』。入団テストのダンスは、『しばしのお別れ』で今泉が躍る場面を思い出しました。ED曲も良く登場した『サントワ・マミー』が流れるなど、古畑ファンにも嬉しい作品だと思います。

以上、『やっぱり猫が好き殺人事件』でした。

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