古畑任三郎の台本をオークションサイトで入手しました。仙台⇆東京を結ぶ東北新幹線内での殺人事件、シーズン1の8話『殺人特急』になります。
台本とドラマを見比べることで、新しい発見が多く見受けられました。 本編では、具体的な駅名の明言は避けられておりましたが、中川外科部長は「スタミナ酢豚弁当」をどこで購入して乗り込んだのか? 事件解決はどの区間距離だったのか?
ドラマでは明かされることのなかった番外編としてお楽しみください。
台本の外観
面白いのは、タイトルが『殺人特急』という表記ではなく、『VS.中川 淳一』となっている点です。シーズン2の台本も幾つか出品されていましたが#16『ゲームの達人』#17『赤か、青か』などは、犯人の名前ではなくタイトル通りになっていました。
シーズン1の段階では、まだタイトルが命名されておらず、古畑任三郎と対峙する犯人の名前だけが台本に印字されていたんですね。タイトルは撮影終了後に名付けられたのだと、考られます。
また、第1シーズンは『警部補・古畑任三郎』と新聞の番組欄で紹介されておりましたが、台本の時点で警部補は無く、最初から古畑任三郎という表記だということが分かりました。
ドラマと見比べる
台詞の違いというものは大きくありませんでした。ニュアンスといいましょうか、砕けた感じの台詞になっていたり、キャラクターに合わせた表現方法でしたね。シナリオ的には寸分の狂いなく、台本通りの進行です。
古畑任三郎:45歳
中川淳一:43歳
宍戸隆:40歳
被害者の宍戸さん、意外と若かったのですね……!
ドラマですと、目撃者の中年女性の名前が不明でしたが、『佐々木ふみ子』という役名が付けられていることが分かりました。
スタミナ酢豚弁当はどこで買ったの?
ドラマでは、「駅で買った」としか台詞がありませんでしたが、台本では『福島駅』にて購入したことが判明しました。研修会と偽って不倫をしていた中川外科部長は、福島で不倫現場を写真に撮られたことになりますね。
古畑任三郎「あんな有名な弁当なのに知らないの?」
『殺人特急』は、山形県天童市が舞台になった『汚れた王将』から、東京に戻る新幹線で起きた事件です。車内販売の売り子のお姉さん2人は知らなかった訳ですが、「スタミナ酢豚弁当」はご当地弁当だった可能性もありますね。福島駅で当時売ってたかも……、というツイートがありました。
放送当時、実際に福島駅の新幹線改札内で似たような弁当売ってたと思う。 https://t.co/PHvx6iqbEY
— 諸葛亮証明 (@nazotoki2012) June 3, 2021
事件発生と解決した区間は?
画像①で、「東京まで、あと何分ですかね?」「1時間くらいで着くんじゃないですか」との台詞があります。(ドラマでは次の駅まで1時間と駅名は伏せられていました)
画像②で、事件解決は「大宮あたりかな」「東京まで持たなかったですね」との台詞がありました。(ドラマでは次の駅までもたなかったですね、となっています)
このことから、識者によるコメントを頂きまして、福島県(郡山)~栃木県(大宮)の区間内で事件が発生し逮捕に至ったことが分かりました。2、3時間程度で事件解決したのではないでしょうか?
すごい!あの事件は「汚れた王将」の帰りなので東北新幹線「やまびこ」の、「次の駅まで1時間ほど」って台詞があったので事件発生から解決は区間距離が長い郡山〜宇都宮間か宇都宮〜大宮間だと思ってたのですが、では後者で確定ですね!
— 白樺香澄 (@kasumishirakaba) June 2, 2021
タイムスケジュール表と車両編成
台本の他に、タイムスケジュールや役者・スタッフの動きが書かれた紙が5枚入っていました。撮影は4日間(1月27日~29日、31日)で撮り終えたようです。その中に、車両編成に関するメモ書きがあったので文章で整理してみます。
自由席 | 04号車 | 今泉、老婆 |
グリーン席 | 07号車 | 古畑、中川 |
グリーン席 | 08号車 | 犯行現場 |
ビッフェ | 09号車 | 食堂 |
ドラマ版ではどうだったのか記載します。
自由席 | 11号車 | 今泉、老婆 |
ビュッフェB | 10号車 | 売店 |
ビュッフェA | 09号車 | 食堂 |
グリーン席 | 08号車 | 犯行現場 |
グリーン席 | 07号車 | 古畑、中川 |
若干車両編成が増えましたね。ここで以前いただいたコメントがあります。
犯行再現実験の時、中川は2度も後ろ向きのまま客室に入り古畑の隣に座りました。これはその後ろの席にヤクザが座っていると思っての行動というのは理解できます。
つまり、その前に実験(おばちゃんの目撃証言)のためにビュッフェ往復する時にヤクザがいる横を通ってきたということですよね。
2020年9月30日:『殺人特急』で花畑様のコメントより
やはり、台本の段階でも『中川はヤクザのいる車両を横切らないとビッフェに入れない』という疑問点が解決しました。
おまけ(東北新幹線に乗ってみた)
実際に、古畑さんが山形~東京に帰るために乗った東北新幹線経路を利用してみました。殺人特急は1994年のエピソードですので、「やまびこ」に乗っていたはずです。今回乗ったのは「つばさ」で、2021年現在2時間40分程で行き来することが可能となっています。
席は前から2番目の『ヤクザ』が座った席で、前の人が黙ってリクライニングシートを倒してきたため、「あっ、殺人特急だな」と心の中で舌打ちしてました。
福島と郡山は取り損ねました。宇都宮あたりで、ビッフェで古畑は目撃者に面通しさせたのだと思います。
大宮あたりで事件解決。
まとめ
「手に入る一次資料を集めなさい。いろいろ探し回ること自体が勉強なのです。必ずしも論文に反映されなくても無駄にはなりません。」
引用:緒方貞子著『戦争が終わらないこの世界で』 P.160より
今回、古畑任三郎の台本を初めて入手してみたことで、疑問だった部分を補填することができました。『台本の発見により持論の証明に繋がる』という、古畑任三郎のエピソードにも、とある発見により証明に繋げることができると興奮気味に話す西洋美術研究家がいましたね。
気になったらいつでもインターネットなどで、「ある程度」は調べることはできます。Wikipediaや、ネット記事を読んだりした後にそれを鵜呑みにせず、ぜひ手に入る1次資料というか引用元の書籍などを手に入れて精査したいと常々思っていました。
今回、運よく入手できた台本から、やれるだけの検証はしました。古畑任三郎はファンが多く、常にレベルの高い考察が繰り広げられています。ただ、どれだけ頑張って想像しても絶対に足りない部分があり、そこを補完するお手伝いができたのではないかと考えています。
以上、『古畑任三郎 8話「殺人特急」の台本を読む。スタミナ酢豚弁当はどこで買った?』でした。
いや、手間と時間そしてお金をかけた労作、感服しました。脚本に具体的な地名まで入っているのは意外でした。けっこう細かいところまで設定されてるものなんですね。あとはやはり、中川医師がヤクザの横を通ることまでは、さすがに脚本上でも想定されてなかったのでしょうか?だとすると、少し残念w
花畑様
≫脚本に具体的な地名まで入っているのは意外でした。
台本の段階ではちゃんと駅名が書かれていたんですね。車両内で起きる殺人事件という設定のため、その辺りの配慮なのでしょうか?
≫中川医師がヤクザの横を通ることまで
構造上どうしても、ヤクザの横を通らなければならないようです。映像ではカットということになりましたが、ヤクザの横を通る際、中川医師が挙動不審な動きをしているのを見て、古畑さんが最後の解決方法を考えたのかも知れませんね。