古畑任三郎 8話『殺人特急』振り返れば奴がいる

【VS.外科医師】「車内で、リクライニングシートを倒す時は必ず一言後ろの人に声をかけてください。そういった小さな思いやりが旅を楽しい物にしてくれます。そう、やっぱり旅は楽しくなくちゃいけません、旅は…」

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データ

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脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:松田秀知

音楽:本間勇輔

本編時間:46分07秒

公開日:1994年6月1日

あらすじ/人物相関図

天真楼病院の外科部長・中川淳一は、愛人との不倫現場を興信所所長・宍戸隆に撮られていた。依頼人は妻らしく、このことがバレると離婚をしなけらばならなくなる。妻の父親は病院を経営しており、また財産は妻の名義で管理している。離婚をすることで、現在の地位と財産までも失ってしまうのだ。

中川は不倫を揉み消すべく、列車内のビッフェで買収を持ち掛ける。しかし、宍戸の意思は固く断られてしまった。だが中川は、買収に失敗したときのために、彼の飲み物の中に睡眠薬を混ぜ込んでいたのだった。

睡眠薬が効いてくる時間になると、8号車にある宍戸の隣の席に座る。そして、フィルムが入っているコートを回収すると、くるぶしにある静脈にカリウムを注射し、心臓麻痺に見せかけて殺害したのだった。

人物紹介

古畑任三郎 中川淳一

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「殺人特急」より引用』】

今回の犯人:中川淳一(なかがわ・じゅんいち)

役者:鹿賀丈史(かが・たけし)

職業:外科医師

殺害方法:

動機:口封じ

概要:詳しく見る
概要:7号グリーン車両に座った医師の男性。天真楼病院では外科部長を務め、妻の父親は病院を経営している。宍戸隆に愛人との不倫現場を撮られてしまい、このことが妻に伝わると離婚することになる。財産は妻名義であり、離婚により現在の地位と資産を失うことを恐れ犯行に及んだ。

計画はまさに大胆不敵である。医者ならではの道具を用い、列車内という不特定多数の乗客がいる中での強行であった。睡眠薬で眠らせ、普通の人ならば知ることも少ない、くるぶし近くにある静脈にカリウムを注射し、心臓麻痺に見せかけて殺害した。

職業病か?『スタミナ酢豚弁当』の食べ終えた容器を、外科医が手術で縫合する時にする『男結び』で縛った。これにより、酢豚弁当が食べたかった古畑が空容器を手に取ってしまい、自身が医者であることがバレるのに繋がってしまっていた。

徐々に古畑が自身を追い詰めてきて、事件としては「中の下の上」と評価される。だが「白状しますよ。殺したのは僕です」とまだ余裕がある丁々発止のやりとりを演じた。しかし、犯行時に目撃者がいたことを知り、それをなんとか回避した時には、かなりの緊張から吐気を催したようで、ハンカチで口元を抑えていた。

十二指腸潰瘍であるらしく、「バスター」という薬を服用しているそうだ。世間話が苦手と語っており、古畑から事件の再現をするためなんでもいいから喋ってと言われた際には「ロシア情勢」について話を振った。買い物はカード派のようで、車内販売で600円のみかんを購入するときクレジットカードで決済した。


古畑任三郎 宍戸隆

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「殺人特急」より引用』】

今回の被害者:宍戸隆(ししど・たかし)

役者:河原さぶ

職業:興信所所長

概要:詳しく見る
概要:8号車両指定席に座った興信所所長の男性。中川純一の妻から依頼を受け不倫調査を実施。そして不倫現場を写真におさめた。中川純一は写真フィルムを、調査金の倍で買い取ろうと持ちかけたが断っている。「依頼人裏切ったら終わりなんだよ。この世界」と信頼重視である。

仕事ぶりは徹底しており、カメラフィルムはコート内側のポケットに入れ、そこを糸で縫い付けて紛失・盗難防止につとめた。コートには多くの物を突っ込んでいれるようで、メガネ/タバコ/目薬/テープレコーダーを入れていた。

心臓病があるらしく『ニトロ』という薬を服用していた様子。また、演歌が好きなようで「石川さゆり」のテープを所持していた。どうでもいいが、食事の食べ方が汚く早食いだ。カレーはカチャカチャとスプーンでかなりの音を立て掻き込み、コーヒーも勢いよく啜り飲み流した。

犯行計画/トリック

【心臓麻痺での病死に偽装】

①中川淳一と宍戸隆は、車両内にあるビッフェで会話。予め宍戸のコーヒーに睡眠薬を混ぜていた。宍戸は不倫現場を写真におさめており、中川は買収しようとするが断られ殺害を決意する。

②中川は車内販売で『みかん』を購入。そして、8号車にいる宍戸の隣の座席に座った。宍戸は睡眠薬が効いているため起きない。宍戸のコートの内側が編み込まれており、そこにカメラフィルムを入れているようだ。なかなか糸を切れないため、コートを脱がした。

③足首にある静脈に『カリウム』を注射する。しばらくして心臓麻痺で死亡する。元々、宍戸は心臓麻痺の薬も服用しており、病死に偽装することもできる。回収したコートを羽織り、自席がある7号車に戻った。後は次に停車する駅で降りれば自身の犯行には辿り着かない。

視聴者への挑戦状

「まーこういうこともあります。しかしですね。私はですね。中川先生が殺したってことに関してはかなり自身があるんですよ。そもそもこの事件は医学的な知識がないと出来ないはんざいです。くるぶしの横に製脈があるなんて普通の人知りませんからね。

そうだ、覚えておいた方がいいですよ。全国の完全犯罪を企んでる皆さん、ね。えー、実はですね。これからひとつ実験をやってみようかと思います。んー、中川先生がうまく乗ってるかどうか分かりませんけども事件の再現をしてみようと。

ひょっとするとですね、犯人しか知らないことまで、つい再現してしまう可能性が。そうなったら、こっちの思うつぼです。まあ、そう簡単にしっぽを出すとは思えませんけども。とにかく皆さん、よーく注意して見ててください」

店員「(コーヒー)お下げしてよろしいですか?」

「まだ残ってるでしょ」

店員「あ、失礼しました」

「(飲み干して)えー、と。古畑任三郎でした」

三幕構成

殺人特急 三幕構成

小ネタ・補足・元ネタ

〇決め手に関しては、刑事コロンボ31話『5時30分の目撃者』を参考にしている。

〇中川淳一は、三谷幸喜が脚本を務めた『振り返れば奴がいる』に登場する人物である。天真楼病院で外科医師をしており、古畑任三郎へのスピンオフ出演となっている。

〇車掌は『梶原善』三谷幸喜作品に欠かせない人物である。

〇時系列的には、第5話『汚れた王将』で帰宅するために乗った列車での事件である。

刑事コロンボ読本の中で、古畑任三郎のプロデューサーを務めた『石原隆』が一番好きなエピソードだと語っている。

まとめ

三谷幸喜さん脚本『振り返れば奴がいる』の登場人物「中川淳一」が犯人として登場する、ファンにとってはたまらないエピソードになっていると思われます。私は原作未視聴ですので、詳しくはコメントできません……いずれ見なければ。

このエピソードの素晴らしい点は、テレビ的な描写を活かしていることです。列車内での殺人ということで、いわば密室状態。古畑任三郎が中川淳一を医者であると見破る場面/被害者がコートのポケットに入れていた小銭の音/リクライニングシートなどなど、丁寧な伏線が張り巡らせているのが見事ですね。

また、三谷幸喜さんならではの遊び心といいましょうか?今回の犯人は『振り返れば奴がいる』の登場人物であることは述べました。そのタイトルにちなんで、古畑の推理によって犯人が『振り返る』ことで、殺人を認めることに繋がるんです。リクライニングシートを倒し、後ろの席の人物を見るために振り返る……。見事な落とし方は必見です。

以上、『殺人特急』でした。