トリックと推理パートが惜しいエピソードです。歯科医師による事件なのですが、アリバイ作りのため、古畑任三郎の治療を助手と入れ替わらせるのです。さすがに、「痛かったら手を挙げてくださーい」「終わったので水でうがいをお願いします」ぐらいの会話があると思うので、今回のトリックが成功する保障は薄そうです。
データ
脚本:三谷幸喜
監督:関口静夫
制作:フジテレビ
演出:佐藤祐市
音楽:本間勇輔
本編時間:46分08秒
公開日:1999年5月4日
あらすじ+人物相関図
歯科クリニック院長・金森晴子(大地真央)は、自分を捨てた営業職・山村淳一(陰山泰)に復讐を計画する。彼の治療を終えると、同じく歯の治療をしに来た古畑任三郎の顔にガーゼを被せ、飛び込みの患者と偽り助手・瀬川エリに治療を行わせる間、金森は男装をして山村のいるオフィスのトイレに身を潜めた。麻酔の効き目がなくなり、痛みを抑える鎮痛剤を飲むために会議室から抜け出しトイレに駆け込んだ山村を射殺すると、クリニックに戻り治療を引き継ぎ、犯行時刻には古畑の治療をしていたというアリバイを完成させたのだった。
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:金森晴子(かなもり はるこ)
役者:大地真央
概要:金森歯科クリニック院長の女性。交際相手の山村淳一から別れを告げられ、経営するクリニックの助手・瀬川エリとの婚約を知ると復讐のために殺害を計画する。治療に訪れた古畑任三郎をアリバイに利用すると、男装して山村のいるオフィスがあるトイレに待ち伏せ。歯の麻酔が切れ、鎮痛剤を服薬しにきたところを射殺した。
今回の被害者:山村淳一(やまむら じゅんいち)
役者:陰山泰(かげやま たい)
概要:「オゾノ物産株式会社」営業職の男性。金森晴子とは高校の同級生であり、その後道でばったりと再会。8年間交際をしていたが、彼女よりも若く、そのうえ金森のクリニックで働く・瀬川エリと結婚をするために別れを告げてしまった。
小ネタ・補足・元ネタ
〇3分39秒~「安斎の紹介で来た」とクリニックに来た経緯を古畑任三郎が語る。次話『古畑、古い友人に会う』の犯人・安斎亨のことである。
〇助手・瀬川エリを演じたのは『伊藤裕子』氏である。
○コーヒーショップの店長・花田を演じたのは『八嶋智人』氏である。
〇オゾノ物産の会議の内容を聞くと、「エクアドル産のカカオ豆」「日本ではガーナ産に押され……」「国内大手のユニコーン製菓」などの内容であり、チョコ菓子関係をメインにする貿易会社だと思われる。
オゾノ物産株式会社:案内図 | |
5F | 受付 |
6F | 営業本部 |
7F | 会議室 |
8F | 管理事業本部 |
○ユニコーン製菓は、29話『忙しすぎる殺人者』の犯人・由良一夫は、26分05秒で「これからユニコーンに行きます」という台詞がありこの企業でプレゼンを行っていたと思われる。また、37話『最後の事件』で古畑任三郎がお土産に貰うサルサブレの製造メーカーでもある。
刑事コロンボからのオマージュ
まとめ
使用した凶器は『0.25口径の拳銃』で、1発で心臓を撃ち抜いており(本当に歯科医師か⁉)と突っ込みたくなるのは、トリックのモチーフである刑事コロンボの某エピソードを彷彿とさせるからでしょうか。(その事件の犯人も射撃が上手すぎるのです)
推理と捜査パートに関しては『今泉と西園寺くん』がメインとなっており、古畑VS犯人の構図が薄くなっています。それに加え『黒岩博士の恐怖』でファミレスの店員だった花田が登場するのですが、この花田の活躍が今後は多くなり、同時に古畑警部補の活躍が少なくなることにも繋がっていきます。
花田のセリフは、「犯人は○○で動機は○○だな。殺害方法は○○」など、まるで冒頭からストーリーを見てきたようなメタ発言です。視聴者も冒頭からストーリーを見てきたわけですので、メタにメタを重ねる演出を楽しめなければ2重で説明を受けることになり、煩わしくも感じるかも知れません。
今泉、西園寺、向島(東国原)、花田と、捜査側の登場人物が多くなるにつれ、上手くキャラクターを処理しきれなくなってきた印象も受けました。特に今泉慎太郎の道化っぷりが強くなっています。
視聴者への挑戦状でもある、『なぜ彼女が怪しいと思ったか』のポイントについては、視覚で得られる情報ではなく、テレビでは伝わらない情報であるのも厳しい演出でした。ただ、多少無理はあるものの、古畑自身を犯行のアリバイにするという設定は面白いですね。
以上、『アリバイの死角』でした。
コメント
しばらくです。まずは合格おめでとうございます。
私の実体験ですが、歯医者に行ったら受付(兼助手)が知人女性だったことがあります。会計時もう一度挨拶を、と思ってみたら微妙に顔が違うw聞いたら、マスクしたらわからないレベルのくりそつ姉妹でした。なので入れ替わりのトリックは目元・髪型や声が似ていたら成立する可能性はあると思います(ドラマで一人二役だとやりすぎでしょうが)。推理のポイントは難しい。もし1回目のときに視聴者にもわかるよう「先生、〇〇ですね」と気づいた反応をいれてたら、2回目はなかったでしょう。ちょっと意地悪なロジックでしたねw
追記すみません。入れ替わりの件は論理的にはいけそうですが、よくよく考えると、果たして「若くて相性もよいけど、目元と声がやたら似てる女にのりかえる」男なんているのか?という別の疑問がでてきますね(笑)
花畑様
コメントありがとうござます!
≫歯医者に行ったら受付(兼助手)が知人女性
≫マスクしたらわからないレベルのくりそつ姉妹でした
人は視覚からの情報量が多いので、マスクで隠された部分は脳内補完されてしまうそうですね。自分が知っている顔に似せたり寄ってしまうので、姉妹だと知らないと効果抜群ですね!
≫入れ替わりのトリックは目元・髪型や声が似ていたら成立する可能性はあると思います
実際に入れ替わりしてみるとどうなるんでしょうかね? 短時間ならばなんとか……。 関わる時間が長いと、仕草や会話の調子から疑われちゃうかも知れませんね。
≫推理のポイントは難しい。
古畑警部補の動作などもヒントになっていましたが、映像作品で嗅覚がポイントになるのは難しい挑戦状ですよね
≫若くて相性もよいけど、「目元と声がやたら似てる女にのりかえる」男なんているのか?という別の疑問がでてきますね(笑)
顔や声を聴くたびに嫌な思い出が蘇りそうですが、ポジティブに考えると、『好きだったルックス』+『若くて相性の良い性格』=『理想の女性』になるのかも知れませんね(笑)
ユニコーン製菓といえば『最も危険なゲーム』でも名前出てきてましたよねw 猿サブレーの
確認しました! サルサブレの箱に明記されておりましたね♪
真田広之の回で「これからユニコーンに行きます」と事務所に電話したあと、チョコレート消費のリサーチ結果のプレゼンをするシーンがありました。自分はサブレは気づきませんでしたが、こういう仕込みを見つけるのも面白いですね
花畑様
≫自分はサブレは気づきませんでした
最も危険なゲームに登場した、ユニコーン製菓の『猿サブレ』。わたしも気がつかず勉強になりました!
このタイトル「アリバイの死角」はコロンボの「構想の死角」をいただいたタイトルですかね?
鋼鉄将軍さま
コメントありがとうございます!
>>「アリバイの死角」はコロンボの「構想の死角」をいただいたタイトル
補足はしておりませんでしたが、おそらく刑事コロンボ「アリバイのダイヤル」+「構想の死角」を組み合わせたタイトルだと考えています。「ルーサン警部の犯罪」=「若旦那の犯罪」など、「〇〇の✕✕」という組み合わせは汎用性がありますよね。また、「構想の死角」は、森村誠一「高層の死角」(1969年)をもじったタイトルだと思います。