あの刑事が再び小説となって帰ってきました。前作『一瞬の過ち』をご覧になったファンや私も楽しみにしていた新聞での連載第2作目です。
今年も書いてみました。小説版「古畑任三郎」。何度もネットのニュースになりましたが、田村正和さん抜きでドラマの新作が作られることはありません。でも小説なら可能。オープニングテーマはながれませんが、古畑と犯人の対決を楽しんでください。
朝日新聞夕刊『三谷幸喜のありふれた生活1055回』2021年9月30日(木)より引用
あらすじ
俳優・シャトー二朗はマルチに活躍する人気俳優である。三谷は、彼がシナリオを執筆する際、箱根にある温泉旅館を訪れることをマネージャーから聞き出すと同じ旅館に宿泊した。偶然を装いシャトーに会うと、アドリブを辞めるように促す。
それを聞いたシャトーは憤慨し立ち去った。深夜、シャトーに再び大浴場で詰め寄るが拒否される。カッとなった三谷は彼を突き飛ばすと、テーブルに頭をぶつけ動かなくなってしまった。
小ネタ・補足
〇シャトー二郎のモデルは『佐藤二朗』氏である。第1回が掲載された反応をTwitterで投稿している。
〇古畑任三郎シリーズで初の監視カメラが登場するエピソードとなった。
〇『箱根』の高級温泉旅館が物語の舞台である。警視庁の古畑任三郎が旅行中に事件に遭遇したのだろうか?
刑事コロンボからのオマージュ
・起用した犯人からくる先入観
・浴衣に着替え直し露天風呂から広がる森を通り旅館へ戻る
・監視カメラの時刻
・紙飛行機に込められた意味
⇒刑事コロンボ37話『さらば提督』
・起用した犯人からくる先入観(同じ俳優が登場する)
・スキューバダイビングの服に着替え海を泳ぎ戻る
・通行ゲートの時刻
・船に文字を書くために使用する型紙に込められた意味
古畑任三郎が掲載された新聞の発刊日
『三谷幸喜のありふれた生活』1055回~1058回に掲載されました。
1回『事件編』:2021年9月30日夕刊
2回『対決編①』:2021年10月7日夕刊
3回『対決編②』:2021年5月14日夕刊
4回『解決編』:2021年5月21日夕刊
読む方法
●朝日新聞『三谷幸喜のありふれた生活』という枠組みを使用した連作小説でした。前作、『一瞬の過ち』も文庫化の際に収録されていましたので、今作も文庫化の際に収録されると思われます。
⇒2024年4月19日に発売された本に収録されております。
まとめ
全4回に渡り連載された『古畑任三郎』を今回もあなたは目撃したでしょうか? 住んでいる地域によって、『三谷幸喜のありふれた生活』が掲載されず、夕刊の発刊もない所もあるようですが、わたしの地域も含まれていました……。
前作『一瞬の過ち』は、翌日の朝日新聞に掲載されており、今回も大丈夫だろうと余裕ぶっこいていたら掲載が無かったのです。だから読むために、朝日新聞の夕刊を某フリマアプリで購入しましたとさ、という個人的な購入に至る経緯はお終いにします。
さて、今回の被害者は『シャトー二朗』ということで、俳優や司会者や監督だったり、よく喋るアドリブも多い人物となっている。モデルになった俳優さんを容易に想像できますね。
犯人は三谷さんで、書いた脚本にアドリブを入れないように詰め寄りますが拒否され突き飛ばしてしまいます。頭を打った被害者が死ぬと分かった上で応急処置を行わず放置したので『過失致死』とはいかないでしょう。いずれにせよ計画的な殺人ではありませんでした。
その場を完璧に立ち去ったのですが、何と古畑任三郎シリーズ初『監視カメラ』が登場しました。私の推理では、誰も気が付かないバッチリ写り込んだ『犯人だと断言できる証拠映像』が事件解決の決め手になるんじゃないかと思っていたのだが、そういう使い方でくるのかと見事でした。
「今回は簡単でしたね。ヒントはありません。古畑任三郎でした」
って、古畑さんが言ってましたが難し過ぎる。満を持して読んだ解決編ですが、意外とあっさり犯人が自供したと思ったら、もう一つ驚愕の事実が待ち受けていました。文字を読み、頭の中で想像していく小説ならではの大きな仕掛けが隠されていたのです。
舞台は箱根にある温泉旅館で、「なんで警視庁の古畑が!」とツッコミを入れたくなるのですが、「また旅行中に事件が起こったのかな?」とも考える。でも、もしかしたら……、 と深読みをしちゃうかも知れないエピソード内容でした。
前作を読んだ人ほど今回のエピソードを楽しめたかも知れない。解決編をご覧になった方は大いに驚いてほしい、そして、もう一度最初から読み直してみると、きっとまた楽しい発見がたくさんできる作品でした。
以上、古畑任三郎 小説第2弾『殺意の湯煙』でした。