古畑任三郎シーズン1の7話『汚れた王将』は、将棋の町が舞台とされる旅館で古畑任三郎と今泉慎太郎が宿泊中に起きた事件である。警視庁の古畑たちが、なぜ『将棋の町』で宿泊したのだろう?
本稿の目的は、我々視聴者がより妄想をしていく道標になることを期待して記述するものである。「こんなどうでもいいことを」なんて悲しいことを言わずに自由にガバガバな想像をしていく。
作中に登場する「将棋の町」はどこにあるのか?
まずは、作中に登場する『将棋の町』がどこにあるのかを特定する必要がある。古畑一行が宿泊した旅館は『扇屋』という名称であった。そこで、今泉がこのような台詞を発するのだ。
今泉「将棋の町ですからなんせ」
(6分46秒『汚れた王将』の台詞より引用)
各部屋に将棋盤があることに驚いた古畑任三郎に対し、今泉が返した台詞である。このことから、事件の舞台となった地域は『将棋』が有名であることが伺える。
将棋の町といえば『山形県天童市』が挙げられるのだが、ちょっと待ってほしい。ネットで「将棋の町」と検索すればヒットする情報で、古畑たちが訪れた町が山形県天童市ということにしていいはずがない。
40話『今、蘇る死』では、おおよそ東京とは思えない場所で事件が発生し、本当にここが東京なのかと古畑がツッコミを入れるシーンが存在する。そのため、『将棋の町』とは言いつつも、山形県であるとは限らないのだ。
だが私の主張としては、古畑たちが訪れた町は『山形県天童市』であると断言する。この舞台設定についての根拠は、作中のセリフや他エピソードの内容(2点から)割り出すことができる。
『山形県天童市』であるという2つの根拠
1点目は、地元警察の台詞である。
事件発覚後、古畑任三郎が捜査に協力することになる。その際、犯人・米沢八段が、隣に座る古畑とは何者なのかを尋ねるシーン(14分~)があり、地元警察から『たまたまここに滞在』というワードが出てくる。
『よそに行って、そこにある期間とどまること』(岩波国語辞典第7版p.878より引用)
『滞在』という言葉を調べるとこう記載されており、他の地域から訪れたのだと捉えることができる。直前には「警視庁の古畑さん」とも紹介をしており、東京ではない可能性が強まる。
2点目は、帰路で起きる事件『殺人特急』との繋がりである。
今泉が宿泊している旅館で翌日将棋の大会があると言い対局を観ていかないかと古畑を誘うのだが、9分31秒で『新幹線に乗って酢豚弁当を食べんの夢なんだからすぐに帰りますよ』と断る場面がある。
8話『殺人特急』は、新幹線で事件が発生し、古畑任三郎は酢豚弁当を購入しようとしていたのだ。このことから、5話『汚れた王将』の帰路であるという説が濃厚だ。
この点からさらに深く掘り進んでいく。『殺人特急』のドラマ内では地名に関する台詞は無いのだが、台本の段階においては正確に考えられていた。次の画像➀~➁を確認してほしい。
『福島・大宮・東京』を確認できただろうか? これらを繋ぐ線路は『東北新幹線』である。古畑任三郎一行は東北から帰路に着いたのだ。勿論、天童市にも新幹線に乗れる駅が存在する。上記、2点を踏まえた上で、『将棋の町』=『山形県天童市』であると断言しても良いのではないだろうか。
『なぜ山形に訪れたか?』3つの仮説
古畑一行が宿泊した旅館が「山形県天童市」にあることを証明した。ここからが本題である。なぜ彼らは、山形に訪れたのかという点である。以下、3つの仮説を掲げる。
➀休暇を利用しての旅行説
➁私用で誰かに会いに行った説
➂仕事で山形に行った説
➀に関しては可能性が低い。➁に関しては無いとは言い切れない。その各々の理由についての見解を後述していく。
➀休暇を利用しての旅行説
『休暇を利用しての旅行』という可能性であるがこれは否定する。理由として、今泉がスーツを持ってきているという点である。今泉が休暇 及び 休職中に起きたと思われる事件をうろ覚えで列挙(下記図表:1-1)していく。
9回『殺人公開放送』 | テレビ局で番組を観戦 | スーツ |
13回『笑うカンガルー』 | オーストラリア旅行 | 普段着 |
14回『しゃべりすぎた男』 | 休職中に恋人に会いに行く | スーツ |
19回『VSクイズ王』 | テレビ局で番組を観戦 | スーツ |
21回『魔術師の選択』 | マジックショーに参加 | スーツ |
22回『間違われた男』 | ボウリング場でゲームに興じる | ボーリングウェア |
23回『ニューヨークでの出来事』 | 海外で結婚式へ参列に向かう | スーツ |
24回『しばしのお別れ』 | フラワーアレジメント教室に参加 | スーツ |
32回『再会』 | 古畑の友人に会いに行く | スーツ |
36回『追いつめられて』 | 日本に向かう飛行機内 | スーツ |
39回『すべて閣下の仕業』 | 南米旅行から戻る飛行機内 | 普段着 |
ここで着目したいのが、旅行での服装だ。13回と39回の海外旅行での服装は『普段着』である。旅行であるのならば今泉くんも普段着を持っていくのだ! 年がら年中に灰色のスーツばかりを着ているわけではないのである。
休暇かつ旅行という日程が重なれば今泉くんも普段着を着てくる。だが「汚れた王将」や「殺人特急」のエピソード内ではスーツを着ていた。つまり、休暇ではなく、誰かに会いに行ってたり仕事関係だった可能性が高くなる。
➁私用で誰かに会いに行った説
大事な行事(ドレスコード)であったりだとか、誰か大切な人(女性、古畑の知り合い)と会う際にはスーツで衣装を固めていることが図表(1-1)を見ると再確認できる。そのため、誰かに私用で会いに行ったのではないだろうか。
しかし、疑問点が浮かぶ。古畑の私用だったとして今泉を同行させるだろうか? 今泉も古畑を連れていくだろうか(誘いそうだけど……)。近場なら分かるが、わざわざ山形である。共通の知人や紹介したい人がいるのだろうか。
それを踏まえた上で可能性がある人物をピックアップしていく。
➀1話『死者のメッセージ』で犯人のペット・ゴールデンレトリーバー(万五郎)の里親探し?(後に古畑の友人・安斎に引き取られるが)
➁12話『最後のあいさつ』で、古畑任三郎の弟が田舎から上京してきたらしく実家で採れたリンゴを貰ったというシーンが冒頭にある。上京前に弟に会いに行った?
➂仕事で山形に行った説
最後に『仕事で山形に行った』という説である。山形といえども広い。そもそもなぜ天童市に宿泊する必要があったのだろうか?
「将棋棋士の対局中の事件だから三谷幸喜が将棋の町の事件にしたかったのだろう」
「特に考えてないと思う」という身も蓋もないの言葉はNG。
山形に仕事(研修・出張)で訪れた可能性を考えると、天童市には県警察学校があるのだ。それに関係があるのではないだろうか。 東京で敏腕を振るう現役刑事が警察学校で講義をしに来たのだ!
あとは、なんか……。 事件に関係のある人物の聞き込みに行ったり、実際に現場を見に行ったとか?(県を越えて研修とかあるですかね? 警察の仕事について書かれた資料が有ったら教えてください)
さらにこの説を強調(こじつけ)させるのが、帰路の事件『殺人特急』での古畑任三郎と今泉慎太郎の座席の違いである。
今泉「やっぱグリーン車はすいてていいですねぇ」
古畑「君も早く こういうところに座れる身分になんなさい」
(6分24秒~『殺人特急』の台詞より引用)
身分=階級だ。古畑は警部補、今泉は巡査。階級格差により警視庁から出される出張費用に差が出たのではないだろうか。ただ、古畑は飛行機内においても部下とは違いワンランク上のクラスを選択しており、自費で出している可能性も高い。
まとめ
そんな感じで結論を出さずに本文を終えます。