狂言誘拐事件を主軸に置いたトリックであり、ノンストップで進行する物語のテンポの良さと緊迫感、ギャグ描写との塩梅も素晴らしい名作エピソードである。何といっても犯人を演じた笑福亭鶴瓶氏のラストの顔芸は後にも後にも先にもない見どころな演出だ。
データ
脚本:三谷幸喜
監督:関口静夫
制作:フジテレビ
演出:星護
音楽:本間勇輔
本編時間:46分13秒
公開日:1994年5月4日
あらすじ+人物相関図

推理小説家・幡随院大(笑福亭鶴瓶)は、別荘で妻・フサ子(高柳葉子)を殺害すると、警察に妻が誘拐したという脅迫文が届いたと通報した。ファックスのタイマー機能を使い予定された時刻に文章が送信される仕組んでおり、架空の誘拐犯をでっちあげたのだ。
警察と共に行動をすることで鉄壁のアリバイを作り、そのうえで、自分で書いた脅迫文通りに行動していき、最後には警察のミスにより妻が誘拐犯に殺害されてしまうという実に小説家らしい犯行計画であった。
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:幡随院大(ばんずいいん だい)
役者:笑福亭鶴瓶
概要:推理小説家の男性。女性秘書・河村ノリ子にぞっこんで愛人関係にあった。そのことを妻・フサ子にバレて揉めていたようだ。別荘で絞殺後、ファックスの予約機能を使い脅迫状が自分宛てに送信されるように仕組み、架空の誘拐事件を作り上げた。
今回の被害者:フサ子
役者:高柳葉子(たかやなぎ ようこ)
概要:幡随院大の妻。夫の秘書・河村ノリ子が愛人関係にあることを知り、かなり揉めていたようだ。冒頭でのみ登場しロープで絞殺されてしまう。
小ネタ・元ネタ・補足
〇1話『死者からの伝言』で、古畑が警察と電話でやり取りする際「幡随院の取り調べ……」というやりとりがある。そのため、1話より前に起きた事件である。
〇撮影現場となったホテルは『浦安ブライトンホテル』である。
〇ノベライズ版『古畑任三郎』の三谷幸喜氏のあとがきによると、投書によるダメ出しが一番多かった回である。犯人が幡随院でなければ不可能だとする根拠が、ファックスモデムを使用すれば誰でも可能であり推理が破綻してしまうそうだ。そのため、ノベライズ版では証拠の根拠が変更されている。
刑事コロンボからのオマージュ
まとめ
ファックスを使用して架空の誘拐事件を作り上げるという、推理小説家の犯人らしいユニークなプロットが光るエピソードです。刑事コロンボにも似た展開の話があるのですが、違いは最後まで誘拐事件として捜査が進んでいく点です。これにより、ノンストップで事件が進行していく緊迫感があるシナリオになっています。
誘拐事件として事件が進んでいきますので、捜査の主権は古畑の上司にあたる『蟹丸警部』がもっています。そのため、殺人事件担当の古畑はノータッチの状態で誘拐事件の行く末を見守っていくことになります。
古畑は警部に助言することもなければ、犯人に対して妨害行動(しつこく質問はするが)もあまり取らない。犯人の行動やファックスの内容などから、即座に幡随院が犯人であることを推理するポイントは見事であります。
描写として面白いのが、古畑や今泉が『甘い物を食べる→辛い物が食べたくなる→口直しに甘い物……。小説を読んだり』など、真剣に捜査する蟹丸警部たちから一歩引いた所で好き勝手に行動している所です。頭脳明晰ですでに犯人をロックオンしている古畑ですが、他の刑事たちは全然彼には注意を払わず誘拐事件に気を取られている。真剣な捜査陣⇔自由気ままな古畑というコントラストの対比が上手く効いています。
さて、このエピソードで魅力的なのが笑福亭鶴瓶氏の顔芸です。残忍な犯人の狂気の笑みと言うのでしょう、自らが考え出した誘拐事件を楽しんでいるような笑みは引き込まれました。また、ラストに提示される証拠で幡随院が顔を次々変えて映し出される、今後のエピソードにはない演出も見どころの1つでした。
以上、古畑任三郎 4話『殺しのファックス』でした。
