フジテレビで1994年から2006年まで続いた刑事ドラマ『古畑任三郎』は、犯人視点から事件が進む倒叙形式や、刑事役「田村正和」氏の好演もあり大ヒットをしました。
さて、三谷幸喜氏がリスペクトした『刑事コロンボ』から影響を受けたであろう部分が、古畑任三郎のエピソードでは節々に多く存在しています。
この記事では、古畑任三郎の原型となった、刑事コロンボからのオマージュ元をまとめていき、後半はパクリに該当するのかを考察していきたいと思います。
構成上、一部ネタバレがありますのでご了承ください。
第1シーズン(1話~12話)1994年
| タイトル | 古畑任三郎の内容 | オマージュ元 | |
| 1回 | 死者からの伝言 | 殺害方法 | 41話「死者のメッセージ」 |
| 2回 | 動く死体 | シーズン1の2話。真実を話そうとする被害者が部屋から出るのを阻止するため、揉み合い末にテーブルに後頭部をぶつけさせる過失致死。自販機で買ったコーヒーを犯人に渡す。古畑に誘導され、被害者の遺留品である懐中電灯を探す。 | 4話「指輪の爪あと」 |
古畑と警察がヒソヒソ話をしながら犯人を見る。犯人は疑われると思ってドキドキする。 | 42話「美食の報酬」 | ||
すっぽんの安全装置。特定の条件により犯人だと断言される。 | 16話「断たれた音」 | ||
| 3回 | 笑える死体 | 精神科医が犯人。古畑がストッキングを被りタバコを吸えたことを証明する。 | 31話「5時30分の目撃者」 |
強盗が入ったことで正当防衛による殺人を主張する犯行計画。 | 7話『もう一つの鍵』 | ||
| 4回 | 殺しのファックス | 殺害後に誘拐事件をでっちあげ、警察も捜査に加わる。ファックスの送信予約時間に合わせて送られる脅迫文書に従い、自ら身代金を運び、途中で飲食店に立ち寄る。 | 2話「死者の身代金」 |
11話「悪の温室」 | |||
| 5回 | 汚れた王将 | 将棋のタイトル戦中の殺人 | 16話「断たれた音」 チェスの世界チャンピオン戦中の殺人 |
立会人・大石(小林昭二) | 32話「忘れられたスター」 | ||
立会人・立花(石田太郎) | 石田太郎は、二代目刑事コロンボの声優 | ||
不正を仕込んだところ被害者に目撃される。犯人の性格が解決編で影響する。 | 15話「溶ける糸」 | ||
| 6回 | ピアノ・レッスン | 被害者がピアノを弾いている隙に犯行に及ぶ。古畑がグランドピアノで『函館の女』を人指し指で弾く。 | 10話「黒のエチュード」 |
楽屋で古畑が犯人の帽子を被り、犯人に鑑越しに見られる。 | 38話「ルーサン警部の犯罪」 | ||
| 7回 | 殺人リハーサル | 犯人自身が犯行現場となる場所に捨てたポラロイドカメラの写真から疑われる | 27話「逆転の構図」 |
| (1)撮影所閉鎖を阻止する動機(御曹司の息子が経営難の撮影所をスーパーにする) (2)犯行を認めたセリフ「私はこれっぽっちも後悔していない。これっぽっちもね。男にはね。命に代えてでも守らなきゃならないものがある。私はね、何回だってやるつもりだよ」 | 28話「祝砲の挽歌」 | ||
| 8回 | 殺人特急 | 目撃者に犯人の顔を確認してもらうが、思っていた人と違う人物を目撃していた。 | 10話「黒のエチュード」 |
| 解決方法 | 31話「5時30分の目撃者」 | ||
| 9回 | 殺人公開放送 | インチキ超能力者が犯人 | 46話「汚れた超能力」 |
事件解決方法(自分以外の○○が決め手に) | 6話「二枚のドガの絵」 | ||
| 10回 | 矛盾だらけの死体 | 殺したと思っていた被害者が生きており、2度目の殺人を行おうとする。 | 16話「断たれた音」 |
体調不良を装い注射器をくすねる | 29話「歌声の消えた海」 | ||
古畑が凶器を回収した際のセリフ「こういうのを証拠っていうんです」 | 42話「美食の報酬」 | ||
| 11回 | さよなら、DJ | レコードプレーヤーに針を落とそうとするが、犯行直後のために手が震えてしまい役目を譲る。 | 19話「別れのワイン」 |
古畑「人がね、いつもと違うことするっていうのは気になるんだよ」 | 30話「ビデオテープの証言」 | ||
ラジオ局内を『サントワマミー』が流れる時間内に行き来する。 | 43話「秒読みの殺人」 | ||
殺人予告を自分に送り、被害者に自分と同じ服装をさせることで間違って殺されたように見せかける。 | 20話「野望の果て」 | ||
| 解決方法 | 34話「仮面の男」 | ||
| 12回 | 最後のあいさつ | 犯行を認めたセリフ「残念だよ。洋子の事件も君に担当してもらいたかった」 | 41話「死者のメッセージ」 「もし、あなたが姪の事故の捜査をやってくださったら」 |
第2シーズン(14話~23話)1996年
| 14回 | しゃべりすぎた男 | 「人はものを先入観で見る」という犯人のセリフ。アヴァンタイトルでは、ロールシャッハ検査について語る。 | 1話「殺人処方箋」 |
犯行現場まで犯人と古畑が一緒に車で移動するが、犯人は現場まで「一度も行ったことがない」ととぼけて道を尋ねる。 | 21話「意識の下の映像」 | ||
通話中のとある音が電話のアリバイを崩すきっかけになる。 | 12話「アリバイのダイヤル」 | ||
(1)シーズン2の1話で通常よりも尺が長い。 (2)動機と展開 (3)証拠を記録されていたことが詰め手になる。 (4)刑事コロンボ読本P.275の三谷幸喜氏へのインタビューによると、当初犯人の職業はロック歌手を想定していた。 | 11話「黒のエチュード」 (1)シーズン2の1話で通常より尺が長い。 (2)不倫相手から関係を暴露すると脅され犯行に及ぶ。被害者に好意を寄せる人物が犯行現場に訪れており疑われることになったが、後に彼を弁論して立場を守る。 (3)証拠を記録されていたことが詰め手となる。 (4)音楽関係者(指揮者)が犯人。 | ||
| 15回 | 笑わない女 | (1)戒律の厳しい女学校。古畑たちは被害者の追悼式に参加し、二段ベッドのある空き部屋に泊まり、生徒らと食堂で食事をする。 (2)空き部屋に案内する生徒は俳優の子どもであり、性別とやりとりが反転している。 ※生徒『なぎさ』(演:藤谷文子)俳優:スティーブン・セガールの娘が空き部屋の案内役を務め、古畑がカマを掛けると、タバコを吸っていることを認める。 | 28話「祝砲の挽歌」 (1)規律正しい陸軍幼年学校。コロンボは被害者の追悼式に参加し、二段ベッドのある空き部屋に泊まり、食堂で食事をする。 (2)生徒『モーガン』(演:ブルーノ・カービィ)俳優:ブルース・カービィの息子が空き部屋の案内役を務め、コロンボは葉巻に火をつけるためライターを借りようとするが、タバコは吸ってないと答える。 |
犯人は最も知られたくない人物に最も見られたくない一面を晒してしまい、被害者が秘密を守るために職場から去るのを知ったうえで犯行に及ぶ | 35話「闘牛士の栄光」 | ||
| 16回 | ゲームの達人 | 本のページの端が折ってあり自殺を疑う | 32話「忘れられたスター」 |
| 17回 | 赤か、青か | 最年少犯人(大学生)で、最後に動機を尋ねると身勝手な理由で呆れる。 | 56話「殺人講義」 |
おみくじクッキー | 42話「美食の報酬」 | ||
解決編 | 27話「逆転の構図」 | ||
| 18回 | 偽善の報酬 | 犯人のはしゃぐ姿、自白前「私はもう年寄りだし」と情けを求めるやりとり。 | 41話「死者からのメッセージ」 |
| 19回 | VSクイズ王 | 自分の顔を短時間しかアップにさせず、すぐにカメラを切り替えたことをプロデューサーに怒ってメイクセットに入る。 | 6話「二枚のドガの絵」 犯人が自分の顔を長時間もアップさせないで、すぐにカメラを切り替えるようにプロデューサーに怒ってメイク落としに入る。 |
| 20回 | 動機の鑑定 | 古畑が骨董について学び、犯人から「よく勉強されましたね」と賛辞をおくられる。 | 19話「別れのワイン」 |
殺害後に共犯者から電話を掛けてもらいアリバイをつくる。ガラス片が遺体の上にあったことから疑われる。 | 33話「ハッサン・サラーの反逆」 | ||
被害者のメモ「六半、うずくまる、かなり寒い」 | 39話「黄金のバックル」 | ||
| 21回 | 魔術師の選択 | 作品のモチーフ | 36話「魔術師の幻想」 |
犯人役・山城新伍 | 38話「ルーサン警部の犯罪」 | ||
| 22回 | 間違えられた男 | なし | |
| 23回 | ニューヨークでの出来事 | なし |
総集編『消えた古畑任三郎』
| 25回 | 消えた古畑任三郎 | なし |
第3シーズン(28話~38話)1999年
| 28回 | 若旦那の犯罪 | タイトルの由来 | 38話「ルーサン警部の犯罪」 |
| 犯人の師匠役(梅野泰靖) | 犯人役として3度登場したロバート・カルプの吹き替えを担当 | ||
| 29回 | 忙しすぎる殺人者 | 多忙を極める犯人のキャラ設定 | 52話「完全犯罪の誤算」 |
| 特定の位置でなければ見えないモノを見ていた | 28話「祝砲の挽歌」 | ||
| 30回 | 灰色の村(古畑、風邪をひく) |
最後に犯人が、自分が去った後の村の行く末を案じて日本酒で乾杯する。 | 19話「別れのワイン」 最後に犯人が、自分が去った後のワイン工場の行く末を案じてワインで乾杯する。 |
| 31回 | アリバイの死角(古畑、歯医者へ行く) | トリックのモチーフ「なぜ被害者がトイレに行く時間を知ることができたのか」 | 21話「意識の下の映像」 |
事件解決方法 | 27話「逆転の構図」 | ||
| 32回 | 再会(古い友人に会う) | なし | |
| 33回 | 絶対音感殺人事件 |
指揮者が犯人。被害者を灰皿で殺害し、ペットの金魚も死ぬ。被害者に好意を寄せる楽団員に罪を擦り付ける。 |
10話「黒のエチュード」 |
| 34回 | 哀しき完全犯罪 | 犯人が犯行後に鏡を見て微笑む。被害者の本当の真意が最後に分かる演出。 | 32話「忘れられたスター」 |
架空の電話でアリバイを作るが話した内容に矛盾が生じてしまう。 | 26話「自縛の紐」 | ||
犯行現場の照明から怪しまれる。ラストで着飾った犯人が古畑に手引きされ退場する。 | 39話「黄金のバックル」 | ||
| 35回 | 頭でっかちの殺人(完全すぎた殺人) | 大規模な研究施設、登場人物がほとんど白衣。犯人の心情が事件解決の決め手になる。 | 23話「愛情の計算」 |
| 西園寺くんが事件捜査を一任され、今泉から「張り切っちゃって」と茶化される。結果、勇み足で罪を擦り付けられた女性を誤認逮捕する。ラストシーンでは、その女性の横を犯人が通り過ぎる。 | 11話「悪の温室」 | ||
| 36回 |
雲の中の死(追いつめられて) | なし | |
| 37回 | 最も危険なゲーム前編・後編(最後の事件 前編・後編) | ドラマ最終回。動物愛護団体を隠れ蓑にするテロリストが犯人。被害者は組織を裏切り射殺される。 | 45話「策謀の結末」 旧シリーズ最終回。北アイルランド援護協会を隠れ蓑にするテロリストが犯人。被害者は犯人を裏切り射殺される。 |
| 38回 |
スペシャル回(13話、24話、26話、27話、39話)
| 13回 | 笑うカンガルー | 犯人と被害者の関係。被害者のどこにでもメモを取る性格。 | 3話「構想の死角」 |
古畑と今泉が、オーストラリア旅行を缶詰の懸賞で当てる。 | 29話「歌声の消えた海」 | ||
| (1)夫を殺してしまったと相談を受け偽装工作を行う。 (2)解決編の展開 | 25話「権力の墓穴」 | ||
被害者のメガネについて、事件前/事件後の違いを指摘する。 | 10話「黒のエチュード」 | ||
| 24回 | しばしの別れ | (1)発表会を抜け出し時間内に犯行現場を行き来する。 (2)犯人・二葉鳳翆と家元・二葉鳳水との秘密の関係(同性愛) | 43話「秒読みの殺人」 試写会を抜け出し時間内に犯行現場を行き来する。犯人のケイと女優・バレリーの関係が同性愛を感じさせる。 |
| 26回 | 古畑任三郎vsSMAP | 数珠が1つなくなる。ズボンの裾に紙切れを入れ証拠をでっちあげる。 | 13話「ロンドンの傘」 |
ラストのセリフ「彼らは悪い人間じゃないよ。そうでなかったら、こんなにたくさんの人の心は掴むことはできません」 | 24話「白鳥の歌」 | ||
| 27回 | 黒岩博士の恐怖 | なし | |
| 39回 | すべて閣下のしわざ | 大使館内の殺人。過激派組織の犯行に偽装。 | 33話「ハッサン・サラーの反逆」 |
ゼリービーンズをつまみ食いする犯人。 | 52話「完全犯罪の誤算」 | ||
| 犯人が地震に対する支援金を払い、メキシコのサンチェス知事から表彰を受ける。 | 35話「闘牛士の栄光」 コロンボがメキシコでの旅行中に事件を捜査するが、その時の相棒がサンチェス警部。 |
ファイナルシーズン(40話~42話)2006年
| 40回 | 今、甦る死 | ストーリーの構成 | 37話「さらば提督」 |
| 道楽者の御曹司が会社の身売りを阻止するため社長を殺害して経営を引き継ぐ | 8話「死の方程式」 | ||
事件解決方法 | 5話「ホリスター将軍のコレクション」 | ||
ラストのモチーフ | 14話「偶像のレクイエム」 | ||
| 41回 | フェアな殺人者 | 本業が俳優ではないイチロー(野球選手)が犯人。自分も死ぬかも知れない殺害方法 | 24話「白鳥の歌」 |
事件解決方法 | 23話「愛情の計算」+27話「逆転の構図」 | ||
| 42回 | ラスト・ダンス | 冒頭「ブルガリ三四郎」の推理 「遺言状隠しましたね。絶対に捜査の手が届かない場所に」 | 15話「溶ける糸」 |
双子の犯人というモチーフ | 17話「二つの顔」 | ||
銃声とピエロの人形 | 30話「ビデオテープの証言」 |
番外編『古畑中学生』2008年
| 43回 | 古畑中学生 | なし |
新聞小説(2020年~)
| 44回 | 一瞬の過ち | 鏡を見ると額にも小さな血の痕が付いており、慌ててハンカチで拭う | 40話「殺しの序曲」 鏡を見ると額に煤(スス)が付いており、慌ててハンカチで拭う |
| 45回 | 殺意の湯煙 | ・起用した犯人からくる先入観。 | 37話『さらば提督』 ・起用した犯人からくる先入観。 ・スキューバダイビングの服に着替え海を泳ぎ戻る。 ・時刻のズレ。 ・船に文字を書くために使用する型紙に込められた意味。 |
『古畑任三郎』は『刑事コロンボ』のパクリなのか?
『古畑任三郎』は、『刑事コロンボ』と同様に、犯人側の犯行から描き始める「倒叙(とうじょ)ミステリ」と呼ばれる形式を採用しています。この形式において、両作品は今日では代表作としてしばしば並び立って語られます。
実際に全エピソードを比較すると、さまざまな場面において『刑事コロンボ』からの影響が見て取れます。
では、『古畑任三郎』は「パクリ」なのでしょうか、それとも「オマージュ」なのでしょうか。
両作品の共通点や流用箇所を整理しながら、その位置づけについて考察します。
1.パクリとオマージュの違い
「古畑任三郎 刑事コロンボ」と検索すると、「パクリ」という言葉が関連語として表示されることがあります。このことから、両作品の類似性が広く認識されていることがうかがえます。
まず「パクリ」とは、「盗作や盗品などを指す語」⁽1⁾とされています。他人の作品をあたかも自分のもののように扱い、模倣する行為を指し、「パクリ=盗作」と理解されます。
一方「オマージュ」とは、「①尊敬。敬意。②賛辞。」⁽2⁾とされ、既存作品への敬意を前提とした表現です。影響を受けた作品に対し、自身の解釈や独自性を加えて再構成する行為だと捉えることができます。
創作界隈では、これらの違いを分かりやすく示す言い回しとして、次のように整理され紹介されています。
- バレて困るのがパクリ
- バレなきゃ困るのがパロディ
- バレると嬉しいのがオマージュ
- バレないと困るのがリスペクト
この整理から分かるように、重要なのは作品に込められた「意図」や「態度」です。原形となる既存作品のアイディアを、どのように独自の作品に組み込んで表現しているのかが重要になるのです。
2.著作権的観点(トリックや設定について)
著作権法において保護される著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(2条1項)とされています。
ここで重要なのは、著作権の観点では、「アイデア」そのものではなく「表現」が保護の対象であるという点です。したがって、表現の本質的な類似が認められる場合に初めて、盗作と評価される可能性があります。
そのため、トリックや設定といったアイデアが共通していても、それだけで直ちに著作権侵害となるわけではありません。問題となるのは、表現の具体的な一致や類似性です。
古畑任三郎の一部には、類似する箇所が見られますが、物語全体として見ると、構成やセリフ回し、演出は異なっています。
そのため、作品全体としては、刑事コロンボに見られるアイデアと似ている部分があるものの、『古畑任三郎』における表現方法は独自のものであり、別個の著作物と評価できます。
したがって、古畑任三郎は心情的にはオマージュであり、法的にも著作権侵害には当たらないと考えられます。
以上を踏まえると、古畑任三郎がパクリとされるためには、ストーリー構造や展開の順序、重要な演出などにおいて、表現レベルでの本質的な一致が必要になるといえるでしょう
そこで、どのような部分に「古畑任三郎のオリジナリティ(独自性)」があるのかを考えていきます。
3.両作品の共通点
両作品の主な共通点として、以下が挙げられます。
- 倒叙ミステリ形式(犯行が最初に提示される)
- 個性的な刑事と完全犯罪を企てる犯人の対決
- 心理的な駆け引きを軸とした展開
しかし、これらはミステリ作品全般に広く見られる要素でもあります。そもそも倒叙ミステリの源流は、ドストエフスキー『罪と罰』(1866年)や、オースティン・フリーマン『歌う白骨』(1912年)などに求めることができます。
その中で『刑事コロンボ』が革新的であった点は、個性的な刑事と犯人との会話を中心とした心理的駆け引きを、映像作品として確立したことにあります。
したがって、これらの共通点のみをもってパクリと断定することは難しく、「倒叙」というジャンルの共有と捉えるのが妥当です。
4.刑事像と舞台設定の違い
| 比較項目 | 刑事コロンボ | 古畑任三郎 |
| 外見・印象 | 庶民的、よれよれのコート、だらしない | フォーマル、黒のスーツ、紳士的 |
| 性格 | 謙虚さを装いつつ執拗に食い下がる | 礼儀正しいが、負けず嫌いで皮肉屋 |
| 捜査スタイル | 地道な聞き込み、物証の積み上げ | 犯人との知的な対話、心理的洞察 |
| 演出の特徴 | 写実的な刑事ドラマ | メタフィクション、舞台演劇的手法 |
『刑事コロンボ』は、庶民的でだらしない外見とは対照的に鋭い推理力を持つ警部補です。そのギャップによって、社会的地位の高い犯人を追い詰める構図が特徴です。また、ロサンゼルス市警に所属し、地道な捜査と聞き込みを重ねることで事件を解決していきます。
一方、『古畑任三郎』も同じく警部補ですが、フォーマルで紳士的な人物として描かれています。礼儀正しい一方で、負けず嫌いで子供のようないたずらっ子な一面もあり、犯人を精神的にも追い詰めていきます。また、今泉や西園寺といった部下とのコミカルなやりとりも特徴の一つです。
演出面にも大きな違いがあります。『古畑任三郎』では、暗転シーンや視聴者への「挑戦状」といった演出が用いられ、作中の人物が視聴者に語りかけるメタフィクション的構造が採用されています。
これは、アメリカのテレビドラマ『エラリー・クイーン』(1975年)の演出から影響を受けており、独特の緊張と緩和を生んでいます。
また、『刑事コロンボ』が決定的な物証によって鮮やかに幕を閉じるエピソードが多いのに対し、『古畑任三郎』では逮捕前に犯人が自らの動機や心理を吐露する場面が印象的であり、古畑任三郎の大きな魅力だと感じます。
古畑の「なぜ○○をしたのですか」という問いかけにより、物語は単なる事件解決を超え、犯人の心の解放(カタルシス)へと至ります。この情緒的な解決プロセスは、両作品の大きな相違点といえるでしょう。
5.エピソード構成と影響関係
『古畑任三郎』の各エピソードは、『刑事コロンボ』から主に以下の要素を組み合わせて構成されています。
①キャラクター設定などの表面的要素
②トリックや舞台設定といった構造的要素
例えば第20話「動機の鑑定」では、「骨董商の犯人と刑事の会話」や「共犯者を利用した犯行」といった要素が見られます。これらは『刑事コロンボ』の「別れのワイン」における知識をめぐるやりとりや、「ハッサン・サラーの反逆」におけるアリバイ工作など、複数のエピソードから要素単位で影響を受けていることが分かります。
しかし、それらは単純な模倣ではありません。日本的な文化背景への置換、演出の反転、キャラクターの再構築などを通じて高度に再構成されており、まさに独自の作品といえるのではないでしょうか。
このような手法は、三谷氏の初映画作品である『12人の優しい日本人』(1991年)が『十二人の怒れる男』(1957年)を下敷きにしながら日本独自の文脈で再創造されたことと同様、三谷氏の一貫した創作スタイルといえます。
6.三谷幸喜にとっての刑事コロンボ
三谷幸喜氏は、『「刑事コロンボ」は大袈裟な言い方ではなく、僕の人生を変えたドラマだ』⁽3⁾と述べており、その影響を明確に認めています。
また、『僕の観たい『コロンボ』、僕の観たい〈倒叙〉はこういうのだ、というところから『古畑』が始まったので(略)『コロンボ』と『古畑』が並んでいて、どっちを観てほしいかといえば、僕は間違いなく『コロンボ』なんですよ』⁽4⁾と語っています。
このように影響関係が公言されている点は、少なくともそれが隠された盗用ではないことを示してており、リスペクトしている作品であることは明らかです。
結論:古畑任三郎は独自の要素があるオマージュ
『古畑任三郎』は『刑事コロンボ』から強い影響を受けています。
しかし、倒叙ミステリという形式はジャンルとして共有されるものであり、各エピソードも複数の要素を取り入れて、高度に再構成して作られています。
作者自身が影響を公言している点に加え、視聴者に直接語りかけるメタフィクション的手法や、事件関係者への聞き込みを排して犯人との対決に特化した劇的な構成、部下・今泉とのコミカルな掛け合いなど、独自の表現が確立されています。
そのため単なる模倣ではなく、リスペクトに基づき新たな価値を付け加えた「古畑任三郎」は、独自のオリジナリティを持つ「オマージュ作品」と評価するのが妥当でしょう。
おわりに|古畑任三郎と刑事コロンボをどう見るか
古畑任三郎が日本ドラマ史に残る金字塔となったのは、コロンボという偉大な先人に学びつつも、三谷幸喜氏独自のオリジナリティが息づいているからに他なりません。
三谷氏は「刑事コロンボ」に尊敬や敬意をもっており、その原型となる作品をリスペクトすることで、自分の観たかったもう一つのコロンボとして古畑任三郎という作品を作り上げました。
古畑任三郎の記念すべき第1話『死者からの伝言』ですが、金庫室に被害者を閉じ込めて殺害するという筋書きは刑事コロンボ41話『死者のメッセージ』から、そのまま流用されています。
つまり三谷氏にとっては、これから刑事コロンボのようなドラマを「古畑任三郎」でする、という決意の表明を感じとることができました。
古畑任三郎の原形ともいえる『刑事コロンボ』は、様々な刑事ドラマにも影響を与えております。現在では古典作品に位置付けられてしまいますが、その魅力は時代を超えて愛される理由があります。ぜひ、視聴したことがない方にもおススメしたい作品です。
私も初視聴が再放送があった2017年からで、ドはまりしてこのようなブログまで立ち上げてしまったほどです。
今回、古畑任三郎における刑事コロンボからのオマージュ元を書き出してみましたが、「ここが入っていないじゃん!!」と感じる部分がありましたら、ぜひご教授ください。
以上、【古畑任三郎】刑事コロンボからのオマージュを徹底比較でした。
引用・参考文献
- Webli辞典『パクリ』
(https://www.weblio.jp/content/%E3%83%91%E3%82%AF%E3%83%AA)2026年3月20日11時02分閲覧 ↩︎ - 西尾実・岩淵悦太郎・水谷静夫 編著『岩波国語辞典-第7版新版』岩波書店、2011年 p.188 ↩︎
- 三谷幸喜『三谷幸喜のありふれた生活11-新たなる希望-』朝日新聞出版、2013年 p.21 ↩︎
- 町田暁雄『刑事コロンボ読本』株式会社洋泉社、2018年、p.179 ↩︎
・ 弁護士法人フラクタル法律事務所『著作物とは』
(https://www.fractal-law.net/copyright/tyosakubutsu_toha.html)2026年3月20日11時30分閲覧



コメント
『●人公開放送』
犯人以外の人物(動物)の指紋が決め手 → 『二枚のドガの絵』『大当たりの●』
『矛盾だらけの●体』
体調不良を装い医者のもとへ訪れて医療用具をくすねる犯人 → 『歌声の消えた海』
『魔術師の選択』
南大門を演じた山城新伍氏は『ルーサン警部の犯罪』の犯人ウォード・ファウラーの日本語吹替
オマージュポイント探し、めっちゃ面白いですね! 気づき次第コメントさせてもらっていいですか?
にんざぶろう様
コメント遅れました申し訳ありません!
≫オマージュポイント探し、めっちゃ面白いですね! 気づき次第コメントさせてもらっていいですか?
是非ともお願いします! まだ色々と隠されていると思っています。
≫『●人公開放送』犯人以外の人物の指紋が決め手 → 『二枚のドガの絵』『大当たりの●』
追記しておきます!ドガの絵関連では「黒岩博士の恐怖」かもだったりと考えています。
殺人公開放送は1994年、大当たりの死は1995年ですので該当はしないですね。
≫『矛盾だらけの●体』体調不良を装い医者のもとへ訪れて医療用具をくすねる犯人 → 『歌声の消えた海』
これもそうかも知れないですね!注射器orゴム手袋
≫『魔術師の選択』南大門を演じた山城新伍氏は『ルーサン警部の犯罪』の犯人ウォード・ファウラーの日本語吹替
声優ネタ入れようかと迷っていました。記載してみます!
しゃべりすぎた男はシーズン2の1話繋がりで黒のエチュードを骨格にしてそうですね。
・男が都合の悪い女の家にこっそり行き後ろから殴って犯行を行う
・その女に好意を抱いてる別の男が疑われてしまう
・決め手が「〇〇」でありそのことを記録されていた事で暴かれてしまう
部下を救う法廷ものだから全く違う印象ですけどね。
トロント様
≫しゃべりすぎた男はシーズン2の1話繋がりで黒のエチュードを骨格にしてそう
シリーズに合わせてのオマージュというのはありそうですよね。
≫男が都合の悪い女の家にこっそり行き後ろから殴って犯行を行う
・黒のエチュードでは不倫から離婚を迫られる。しゃべり過ぎた男では結婚を機に愛人関係にあったことの口止め料を搾取される。
・凶器は水差しor灰皿。
≫その女に好意を抱いてる別の男が疑われてしまう
楽団員の男性or今泉慎太郎
≫決め手が「〇〇」でありそのことを記録されていた
なるほど!追記してみます。
花瓶or水差しかという部分では、「ホリスター将軍のコレクション」で、ヘレンという女性が焼き物を作る際に、花瓶にしようか水差しにしようかと迷うシーンがあるので、そこから拝借したのかなぁ……なんて思ってたりもします。
『笑うカンガルー』の野田の眼鏡
と
『黒のエチュード』のベネディクトの花飾り
文章にまとめづらいですけどこれも似てるかなと
にんざぶろう様
≫『笑うカンガルー』の野田の眼鏡と『黒のエチュード』のベネディクトの花飾り
確認しました。言わんすることを分かりました。
【疑問点の提示】
・『笑うカンガルー』被害者のメガネについて、事件前/事件後の違いを指摘する。
・『黒のエチュード』犯人の花飾りについて、直前/直後の違いを指摘する。
というニュアンスでしょうか? 追記しておきます!
『溶ける糸』と『汚れた王将』
どちらも、他の誰も見ていなかった(犯人の)不正行為を目撃しそれを公表しようとした者が殺害される
にんざぶろう様
ありがとうございます!
『溶ける糸』と『汚れた王将』の犯人の性格が、事件解決に影響している点も含まれているのかも知れませんね。
『哀しき完全犯罪』と『黄金のバックル』
犯行後の現場の照明の状態が手掛かりに
にんざぶろう様
ありがとうございます! 追記しました。
『哀しき完全犯罪』と『自縛の紐』
詰めの部分がちょっと似てますよね
古畑「笑える死体」
→元ネタ・コロンボ「もう一つの鍵」
泥棒と間違って殺したかのように偽装。
にんざぶろう様
確認してみます!
残念機長様
≫古畑「笑える死体」→元ネタ・コロンボ「もう一つの鍵」
ありがとうございます!追記します。
にんざぶろう様
≫『哀しき完全犯罪』と『自縛の紐』詰めの部分がちょっと似てますよね
確認しました。架空の電話でアリバイを作ったが、その後の証言に矛盾(犯人しか知り得ない情報)があり仇となってしまう感じでしょうか?
『赤か、青か』⇐『殺人講義』
①最年少犯人
②大学が舞台
③ラストの教育的指導(犯人を平手打ち⇐犯人を手荒に連行させる)
で・んか 様
ありがとうございます!加筆します。加えて、最後に犯人に動機を尋ねる点も影響を受けているかもしれませんね。
今コロンボを見ていたのですが、黒のエチュードで被害者と面会してその後容疑をかけられる男が喋りすぎた男の今泉に似ているように感じましたね。告ろうとして振られるあたりも。他にもこの二つの作品は重なるところがあるように感じます。
デコピン様
返信遅くなり申し訳ございません。再確認しました。
≫黒のエチュードで被害者と面会してその後容疑をかけられる男が喋りすぎた男の今泉に似ているように感じました
犯人と親しい人物が被害者に会いに行っており容疑が掛けられる……この部分は気が付きませんでした。しゃべりすぎた男の今泉も被害者に好意を寄せていましたからね。
≫他にもこの二つの作品は重なるところがあるように感じます
・刑事コロンボ『黒のエチュード』はシーズン2最初の作品で、古畑任三郎『しゃべりすぎた男』もシーズン2最初の作品でしたね。
・動機としても、犯人には愛人がおり、不倫関係を暴露される前に殺害に及ぶ流れですよね。
以前コメントでも、『しゃべりすぎた男』の話の骨格は『黒のエチュード』ではないかとおっしゃる方がおり、「そうなのかも」と今一つ確信を持てないでいました。今回デコピン様からそのように感じたとコメントをいただき、この考察は多数派の有力説になりました。追記させていただきます、ありがとうございました‼
「ピアノ・レッスン」と「黒のエチュード」の共通点に被害者がピアノを弾いてる時に襲われる点を考えたんですが、
よくよく考えると動機の説明無しで開始直後にいきなり犯行が始まる点から「2枚のドガの絵」オマージュですかね。
偶然か狙っているのか分からないですけど共に放送6話目の話です。
ありがとうございます!
>>「ピアノ・レッスン」と「黒のエチュード」の共通点に被害者がピアノを弾いてる時に襲われる
>>動機の説明無しで開始直後にいきなり犯行が始まる点から「2枚のドガの絵」オマージュですかね
「ピアノ・レッスン」と「黒のエチュード」で、被害者がピアノを弾いている最中に襲われる点を追加させていただきます。また、「ピアノ・レッスン」と「2枚のドガの絵」の冒頭の始まり方は確かに似ていますね!
笑わない女の、オープニング後の
聖歌隊の歌う讃美歌の曲名
わかるかた、いらっしゃらないですか?
デストラーデ様
>>笑わない女の、オープニング後の聖歌隊の歌う讃美歌の曲名
疑問点を確認させていただきました。「笑わない女」のコメント欄の方へ曲名を記載しております。
トリックではないですが「死者からの伝言」と「祝砲の挽歌」はどちらも劇中に音楽が使われませんね。
鋼鉄将軍
>>「死者からの伝言」と「祝砲の挽歌」
>>どちらも劇中に音楽が使われませんね
確かに、「死者からの伝言」では環境音のみで進行し、事件解決直前まで劇伴がありませんね。「祝砲の挽歌」でも、ラッパや式典でのドラムロールのみと、音楽の使用に制限を掛けることで、舞台設定の雰囲気、刑事と犯人とのやり取りが印象に残りますね‼
多分ですが「構想の死角」でフランクリン先生が湖で泳いで帰ってくる時の綺麗な水面のキラキラと、古畑任三郎の「笑うカンガルー」で二本松さんがプールで泳いで逃げてくる時の水面のキラキラはオマージュと思います。
刑事コロンボと古畑任三郎、比べるのはほんと楽しいですね!
鋼鉄将軍さま
>>「構想の死角」/「笑うカンガルー」/水面のキラキラはオマージュ
コメントありがとうございます!
水面の演出なのですが、スピルバーグ監督(構想の死角)は水しぶきにエフェクトを掛け光を強調しており、月明かりの下 湖で行われた犯行を表現しておりました。一方、演出・松田さん(笑うカンガルー)は、特に強調させずにプールに設置されたライトを据えて撮影しておりました。また、コロンボでは『右から左』、古畑では『奥から手前』に犯人は泳いでいましたので、寄せるのならばとことん寄せるのではないかと個人的に考えてしまい、ちょっと保留したいと思います。
構図としては近いのですが、はたして松田さんはそこまで寄せたいというこだわりがあったのかが焦点であります。例えば他に担当された作品でもコロンボに寄せた場面があれば意識した可能性もあると思いますが、この辺りは非常に厳格な線引きをする必要があります。今後は演出面も注視して鑑賞をしていきたいです。
『最高のあいさつ』古畑の最後の台詞が「最高の褒め言葉です」→『別れのワイン』コロンボの最後の台詞が「最高のお褒めの言葉です」
有名なエピソードなのでご存じかと思いますが、投稿させていただきました。
ゴロンボ様
コメントありがとうございます! また、確認が遅くなり申し訳ございません。
>>『最高のあいさつ』古畑の最後の台詞が「最高の褒め言葉です」
>>『別れのワイン』コロンボの最後の台詞が「最高のお褒めの言葉です」
たしかに解決編で賛辞の言葉にお礼で返すやりとりがありましたね! エピソードを観返しまして、別れのワインは「ありがとう。何よりも嬉しいお褒めの言葉です」でした。また、刑事コロンボ41話『死者のメッセージ』では、最後に「お褒めにあずかって光栄ですが」といったやりとりもありました。別れのワインの方が真摯に賛辞を受け止めているニュアンスでしたので、そちらの方を意識していたのかも知れませんね。教えていただきありがとうございます‼
「しばしのお別れ」と「毒のある花(Lovely but Lethal)」
花(=華)を生業にする強い女性が、“花/毒”のモチーフとともに覚悟の退場で締める静かな名作──
古畑:オープニングから花言葉を重ね(ミヤコワスレ=「しばしの別れ」)、犯人・二葉鳳翆(山口智子)は最後まで背筋を崩さず、罪を受け止める佇まいで終わる。
コロンボ:ヴィヴェカ(ヴェラ・マイルズ)は毒ツタの接触性皮膚炎という科学的な詰めで追い詰められ、冷ややかな一言を残してオフィスを後にし逮捕へ。
ラストに犯人の気高さを残す編集リズムが同質で、鳳翆の“悲劇のヒロイン化を拒む”覚悟の表情と、ヴィヴェカの氷のような別れ際が響き合う。
さらに、
古畑:家元・鳳水と弟子・鳳翆の師弟以上を匂わせる設計。楽屋のネックレスを掛ける等の近接所作から、睡眠薬入りの茶から会場での注射へと親密さが殺害スイッチに転化する。
コロンボ:ヴィヴェカはシャーリーを言葉で懐へ引き寄せ、毒を仕込んだタバコを手渡す。直後に発症させ事故死に偽装。どちらも乾燥した葉(茶葉/タバコ葉)が媒体となる。
・花と毒の裏表一対
・ライバルの圧力に屈しない強い女性像
・女性の近接が殺害スイッチになる演出
・華(表)としての花と、葉(裏=闇)としての媒介の対位法
・毅然とした退場
以上より、「しばしのお別れ」はしばしば直接の元ネタなしと扱われますが、「毒のある花」への明確な呼応が読み取れると考えますが、いかがでしょう?
肥っ田任三郎さま
確認が遅くなってしまい申し訳ございません。コメントありがとうございます!
≫「しばしのお別れ」と「毒のある花(Lovely but Lethal)」
≫・女性の近接が殺害スイッチになる演出
両作品のタイトルに花が組み込まれており、古畑の家元殺害の流れ≒コロンボのシャーリー殺害という場面から、“女性の接近(コロンボの中でも女性犯人が女性を葬るのは『毒のある花』と『偶像のレクイエム』だけ!)”と“乾燥した葉”を犯行に用いるという類似性を見出すなど大変面白い着眼点だと感じました!
古畑任三郎は刑事コロンボのネタを使う際は主に以下を組み合わせています。
➀キャラ設定などの表面的部分
➁物語の構造的部分(トリックや舞台設定など)
特に物語の構造的部分は同じ展開だとは気が付かないような見事にアレンジされた作品が多いです。そのような事も踏まえ考察を読ませて頂き、古畑では家元だけを殺害したのに対し、コロンボではメインの事件ではなく真相に気が付き強請ってきたシャーリーを第二の殺人で葬っています。また家元は心臓発作に備え注射器を常備していたことを利用して自然死に偽装しましたが、シャーリーは愛煙家ということを利用して事故死に偽装したなどの相違がありますが、『女性の近接が殺害スイッチになる演出』という点、まさにその通りだと感じました!
そして乾燥した葉という類似性ですが、着物を着ているような活花の師匠に楽屋で出す飲み物としては、やはりお茶系(緑茶や麦茶)になるのではないかと思ってしまいました。そのような花にまつわる業界を意識して、『➀キャラ設定などの表面的部分』が元ネタとして用いられたのではないかという点を確認していきます。
>>・ライバルの圧力に屈しない強い女性像
>>ラストに犯人の気高さを残す編集リズムが同質で、鳳翆の“悲劇のヒロイン化を拒む”覚悟の表情
>>・毅然とした退場
古畑では思想に違いがある師弟関係、コロンボでは商売敵同士の化粧品会社というライバル同士となっており、そのような対立関係でも逆境に負けない女性犯人が印象に残ります。さて両作品のラストの台詞を見ていきますと、古畑ではタフな女性として、コロンボでは皮肉を込めた退場となっております。
・鳳翆「冗談じゃないわ。もっと辛い目だって何度もあってるし。なによこれぐらい、たいしたことないじゃん。私きっと帰って来るから」
・ヴィヴェカ「ジョージさんとやらにおっしゃってくださらない「最高のスライドでしょ」って」
私は『しばしのお別れ』は、刑事コロンボの43作『秒読みの殺人』を意識しているのではないかと考えておりました。まず犯行のトリックは他作品でも度々見られますが、“時間内に犯行現場を行き来する(古畑は発表会を抜け出す、コロンボは試写会を抜け出す)”というものです。同性愛という描写では、刑事コロンボのファン同士の交流ナンバー1のブログ『刑事ぼろんこ』様のコメント欄や他ブログ様において、『秒読みの殺人』の犯人と女優バレリーの関係には同性愛を感じると述べている方が多数おります。
また犯人であるケイのテレビ業界でたくましく生きていこうとする姿勢やラストの台詞、「終わったらホッとするってよく言うでしょ。肩の荷を下ろしたような気がするって。でも全然違うわ。その反対よ。私負けないわ。戦って生き残ります。それが私の生き方」といった部分などから、肥っ田任三郎さまのおっしゃられた『“悲劇のヒロイン化を拒む”覚悟』、『毅然とした退場』という見事な表現を感じさせていただきました。
『女性の近接が殺害スイッチになる演出』、『花と毒の裏表一対』、『華(表)としての花と葉(裏=闇)としての媒介の対位法』といった部分に着目してもう一度作品を見ていきたいと思います!!
ありがとうございます。確かに『秒読みの殺人』へのオマージュ要素が強いですね。ケイと鳳翆の対比を意識しつつ、両作品を再度観てみます。
『毒のある花』は、双子の殺人というインパクトの強い『二つの顔』と、名作『別れのワイン』の間に挟まれ、やや地味な印象がありました。ただ、ラストのシーンで割れたスライドからコロンボに追い詰められるヴィヴェカが、うつむき加減で「Very good, Liutenant.」と負け(罪)を認め、直後にコロンボをキッと睨みつつ「Officer!」と別の刑事を呼ぶ。このヴェラ・マイルズの毅然とした演技が美しく、また、退場時の背中に強い意志を感じることができ、隠れた名作に花を添えたいと思い、考察してみました。もう少し視野を広げて他の作品も鑑賞します。
肥った任三郎さま
>>『毒のある花』は、
>>やや地味な印象がありました。
>>ラストのシーンで割れたスライドからコロンボに追い詰められるヴィヴェカ
>>ヴェラ・マイルズの毅然とした演技が美しく、また、退場時の背中に強い意志を感じることができ
私も旧シリーズの中では『毒のある花』はそこまで好きという作品ではありませんでしたが、久しぶりに視聴してみましたら、最後のスライドグラスを端に発した決め手と退場シーンは非常に鮮やかで見事でしたね。ありがとうございました。
コロンボの本放送を見たり二見書房の小説版を買って読んだりして育ったので「あ、今回はこの話から持ってきたのか・・・。」とかニヤニヤしながら見てましたが、あれをオマージュとは言えないと思いますけどね。作成側としてはわざとネタ元がわかるように作っているので「オマージュです。」ということなんでしょう。
正直、「古畑任三郎最高!」と言っている人には「コロンボ見なよ。」と一言言ってあげたいです。
私は先に『古畑任三郎』を視聴しました。そこから2015年にあった再放送の『刑事コロンボ』(5時30分の目撃者)を初めて視聴してドはまりし(面白くて二見書房も全巻買い集めました!)、そこからはお互いに無い魅力がある作品として古畑任三郎も刑事コロンボも大好きになっていきました。
さて三谷幸喜氏は「『刑事コロンボ』 は大袈裟な言い方ではなく、僕の人生を変えたドラマだ。」(三谷幸喜のありふれた生活11 新たなる希望)と語っており、自分なりの和製コロンボを作りたいという思いから古畑任三郎の企画が始まっております。
まず古畑任三郎のベースとして刑事コロンボがあり、三谷氏も「古畑とコロンボが並んでいたら、まずコロンボを見てもらいたい」(『刑事コロンボ読本』インタビューにて)とも言っていますので、まだ見ぬ方にも是非ともおススメしたいですよね。英語版「刑事コロンボ」のWikipediaを見て見ますと、日本版コロンボとして古畑任三郎が紹介されており海外にも認知はされているようですね。